今回、離婚の親権問題の調査について説明します。
離婚後のよくあるパターン
日本では、未成年の子供がいる夫婦が離婚すると、伝統的に母親が子供を育てます。父親は離婚後、子供とほとんど関わりません。
日本では、まだ単独親権制度があります。したがって、離婚が成立した後、父親か母親かどちらか一方だけが親権を持つことになります。
離婚が成立すると、母親が親権も監護権も取得すし、面会交流権も取り決めされないケースが多いです。
子供の連れ去り
日本では、夫婦関係が悪化すると、妻が子供を連れて蒸発するケースがよくあります。
夫婦が別居した後、子供と一緒に住んでいるお家の方が親権や監護権を獲得しやすくなります。
子供のより良い生活を優先するなら、子供の生活環境が変わらないほうが良いという考え方があります(継続性の原理)。
だから、子供の連れ去りが、親権や監護権を取得するために有効な方法となります。
子供の連れ去りは刑事事件ではない
日本では、相手側にDV子供の連れ去りが刑事事件となることはありません。国際離婚の場合、日本国外から日本人の親に逮捕状が出ることがありますが、日本国内で逮捕が実行されることはありません。
刑事事件にはならないし、DVや虐待があったと大げさに主張すれば、子供の連れ去り自体も正当化することができます。
単独親権の特徴
日本のように、単独親権の制度を採用している国では、離婚した後の親権は、父親か母親のどりらかに付与されます。(親権と監護権が別々に与えられるケースも例外的にあります。)
そのため、離婚するときに、夫婦が親権を激しく争うこケースが多々あります。親権や監護権が無い親は、離婚後、面会交流権を持つことができます。しかし、面会交流の約束が守られない事案も多くあります。
更に、離婚後、子供と一緒に住まない親は、その後、子供と一生会わない事が普通であるという伝統もあります。
通常、親権は「子供に多くの利益を与える者」に与えられます。その基準は以下です。
- 子供とより長くいる者が親権を得る
- 母親が優先的に親権を得る
- 経済力が優れている方が親権を得る
因みに、不倫は、夫婦間の問題なので、親権の決定に直接関係しない、と言われています。
「子はかすがい」という日本のことわざがあります。離婚すると、片方の親は、子供は一生会えなくなるので、夫婦関係が悪化しても、子供のために離婚しない方がいい、という古い教訓です。
親権と監護権
親権とは別に、監護権があります。親権は、身分上・財産上の保護監督、教育に関する権利と義務です。監護権は、子供と共に生活をして日常の世話や教育を行う権利です。
離婚後、一方が親権を持ち、他方が監護権を持つというパターンもあります。
面会交流権
制度として、監護権がない親が、子供との面会交流権を持ち、定期的に子供と会える状況を作ることができます。
しかし、面会交流権を無視した親に対する罰則がないため、面会交流の制度がきちんと機能していない側面があります。
その意味で、離婚する夫婦が、親権や監護権を争うケースが多くなっています。
日本の離婚制度
日本では、協議離婚制度があり、お互いが合意すれば、市役所ですぐに離婚が可能です。離婚裁判をする必要はありません。
簡単に離婚ができる反面、裁判所が介入しないため、日本では、親権や面会交流権や財産分与等の取り決めがきちんと決定されない離婚が多いのです。
一方え、方方だけが離婚を希望していて、他方が了承しない場合、調停や離婚に進みます。この場合、離婚事由がないと離婚できません。
離婚事由は以下の5項目です。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない強度の精神病
- 婚姻を継続しがたい重大な事由
離婚の原因で一番多いのは、不貞行為です。そして、不貞行為による慰謝料の請求訴訟も頻発します。
離婚事由や慰謝料請求に直接関係するため、日本では、探偵業者の浮気調査のニーズが多くあります。ですから、浮気調査が、日本の探偵業者の主業務なのです。一般的な日本の探偵の業務の70%は浮気調査であると言われています。
日本の浮気調査と無過失離婚制度
日本での不貞行為の民事訴訟では、不貞行為の証明に関して、非常に厳格なルールがあります。
日本の裁判所は、1回だけの不貞行為なら、多めに見て、離婚しないことをすすめます。また、被告側が、不貞行為を否定する可能性があるため、以下のような条件を満たすのが望ましいと言われています。
- 2回以上の不貞行為の証拠
- 性行為専用のラブホテルの出入りの証拠
- ビジネスホテルや一方の当事者の自宅の出入りの証拠なら、滞在時間が1時間以上の証拠
ビジネスホテルの部屋での滞在だと、二人が商談していたという言い訳が通りやすいです。中には、インポテントであるという診断書をクリニックから取得して、性行為を否認した男性被告もいます。クリニックは、患者の求めに応じて、患者の都合のよい診断書を作成することがあります。
このような環境で、日本の探偵は、浮気調査で、上記のような条件を満たす証拠を収集するよう努力しています。
因みに、西側諸国で主流になっている無過失離婚制度は、いまのところ、日本では全く普及する気配はありません。これが普及すると、離婚事由の証明の必要がなくなり、浮気調査のニーズが激減するかもしれません。
親権問題と不貞行為
上述の通り、親権の争いと不貞行為の問題は、直接関係ありません。
ただし、離婚の原因の多くが、不貞行為です。そのため、親権や監護権を争う際、交渉の圧力材料として不貞行為の証拠を利用する事案も多いと思います。
相手のあら捜しができれば、有利な交渉ができます。
経済状況の調査
子供の親権争いでは、双方の親の経済状況が比較されます。
子供の親権を争って、子供の連れ去った妻側の勤務先や資産の調査が行われることも多いです。対象者が自発的に資産状況を開示しない場合は、探偵業者が資産調査を請け負うことも多々あります。
一方、子供の親権争いのみならず、離婚の際に、財産分与や子供の養育費も問題で、妻側から夫側の勤務先の資産の調査が実施されることも多々あります。
日本の芸能人の事例
日本の芸能人や著名人の離婚や親権争いは、上述してきた日本の事情を反映したモデルケースとなっています。
2022年後半にも、元女性アイドルの芸能人女性の不貞行為と子供の連れ去りのゴシップが発生しました。彼女は、日本の元女性アイドルの30歳代の女性です。幼児の娘が一人いて、彼女はママタレ(母親のイメージで活動するタレント)として活動していました。
彼女は夜中に外出を繰り返していたため、夫が、彼女の不貞行為を疑いました。そして、夫は、その証拠を取りました。
夫は、離婚する前提で、子供を連れて別居しました。彼女は、不貞行為を否定し、離婚や親権争いのための係争中となっています。
日本の子供の親権争いでは、自動的に、母側(妻側)の親権が優先する法則がありあす。親権争いでは、最初から、夫側が不利です。そのため、このケースでは、夫側が子供を連れ去って別居しました。
ただし、一時的な監護者指定のための調停始まり、結果的に、彼らの娘は母親側の監護下の置かれました。
彼女は芸能人であるため、経済力でも夫より優位に立っている可能性があります。こうした流れからすると、父親側が子供の親権や監護権を獲得する可能性は高くありません。
共同親権制度への移行
最近では、共同親権制度を導入しないと、離婚による親子断絶が多発し、子供の福祉上よくないという意見も出てきています。また、子供の連れ去りをする親は、面会交流を認める代わりに、高額な養育費を出費させる傾向があります。これに関しては、「子供を人質とした身代金要求だ」と批判する人もいます。
まとめ
以上、国外との比較的観点から、日本での離婚、子供の親権争い、不貞行為の問題等について解説しました。
日本人にとっては、国外との比較によって、日本の制度の本質をより深く理解していただきたく思います。非日本人の方には、日本の制度の現状を客観的に理解する助けとなることを希望します。