探偵や興信所で使用する用語に行動調査、素行調査、尾行調査という類義語があります。それらの言葉がどう違うのか、また、一般的な認識と業界内での定義の違いについて説明します。
行動調査の定義
一般的な意味での行動調査
2020年に大問題となったコロナウイルスのパンデミックでは、感染者に対して、疫学上の行動調査が盛んに行われています。これは、感染者の「過去2週間の行動」と、「濃厚接触者」を割り出すための調査です。英語ではContact Trace(コンタクトトレース)と言われます。
疫学上の行動調査の目的は、過去2週間の行動確認ですから、対象者本人への事情聴取が基本的な調査手法となります。これは任意での取り調べで、虚偽申告しても罰則を科すことができません。当然、以下のような秘密行動を行っていた場合、素直に申告することはないため、感染経路の把握ができなくなったケースが多数出ています。
- 浮気相手との接触
- 会社の機密情報を漏らすための同業他社との接触
- 横領した金での風俗遊び
- 勤務先に秘密にしている副業勤務
- 周囲に公表していない美容整形手術
探偵業界における行動調査
探偵の行動調査も、調査目的は疫学上のコンタクトトレースと同じです。つまり、対象者が「どこで」「何をして」「誰と接触するか」を確認することが目的です。探偵の行動調査の目的は、感染者が疫学上の行動調査では絶対に自白したくないような事実を明らかにすることです。
探偵業法における探偵業の定義を見ると、「聞き込み、張り込み、尾行で所在や行動の調査をすること」とされています。不審な行動は、聞き込みではなかなか判明しないため、必然的に尾行や張り込みの手法で調査されます。
まとめると、業界内で行動調査といえば、尾行や張り込みの調査を指します。これらは行動確認調査と言われる場合もあります。しかし、世間一般では、上述したような疫学上の行動調査や、マーケティングリサーチの購買行動調査等、もっと広い範囲で使用されています。
「尾行調査」や「素行調査」との違いは?
「素行」と「行動」の違いについてですが、「素行」は、その人物の行動のみならず、性格や嗜好、人間関係などを含む全体的な特徴を指す言葉です。探偵・興信所業界の中では、素行調査も行動調査もほぼ同義語ですが、素行調査は、尾行張り込みによる行動確認調査以外に、聞き込みなどによる身辺調査の意味も含むため、やや意味合いが広くなります。
尾行調査の概要
尾行調査は、特に尾行や張り込みで行う、行動確認調査の手法を指します。尾行調査が有効なのは、調査対象者の公表されない交友関係、不正行動の真相を確認する場面です。調査対象者の秘密行動は、尾行調査を行わないかぎり、なかなか判明しません。
尾行調査については、こちらのページに調査の詳細をまとめています。
素行調査の概要
素行調査は、基本的に調査対象者の秘密行動や不正行動の真相を暴いたり、性格や家族情報や交友関係などの背景情報を取得するために行われます。
具体的には以下のような場面で行われます。
- ビジネス上の人事的なトラブル
- 債権回収のための勤務先調査や資産調査
- 家庭内の浮気や子供の親権問題などのトラブル
- 配偶者や子どもの家で問題のトラブル
- 結婚相手や取引相手の人物情報の収集
素行調査の例としては、「聞き込み調査」が挙げられます。しかし、事件性や話題性のある案件以外では、事情をよく知る関係者に取材したとしても、通常、なかなかコメントが得られません。被取材者が共犯的な立場であれば、自分が不利になることを話すわけがありません。また、直接自分に実害がないとしても、無断で対象者のことを話して、あとになって対象者から訴えられることを恐れます。
そのような理由から、効率よく決定的な証拠を掴むには、行動調査が有効です。ただし、偽装調査(ソーシャルエンジニアリング)的な方法を用いたプロの調査員の取材テクニックであれば、聞き込み調査でも通常では得られないコメントを引き出せる可能性はあります。
素行調査についての詳細は、こちらのページをご覧ください。
各調査の違いのまとめ
行動調査は、探偵興信所の業界内では、調査手法の一つとして定義されています。対象者の「行動」を調査するために、尾行や張り込みといった手段を使用します。
尾行調査は、行動調査と同じく、調査方法の一つです。対象者の行動を調査するという目的では同一ですが、その手段として文字通り「尾行」や「張り込み」を使用するという意味で、より具体的な行動確認調査の手法の一つを指しています。
素行調査は、調査手法を指すだけでなく、調査項目の一つとして定義されます。素行調査は、行動調査の要素も含みますが、対象者の外出時の行動や性格、交友、関係、家族関係などの全般的な「素行」を調べる調査項目として捉えられています。
探偵興信所業者に調査依頼するときは、これらの用語が、調査項目の一つとして定義されているのか、調査手法として定義されているのかを明確にしておきましょう。そうでないと、相談を進めていく段階で誤解が生じてしまうかもしれません。
行動調査が必要になるケースは?
尾行張り込みの行動調査が必要とされるケースは、調査対象者の秘密行動や不正行動の真相を突き止めたい場面です。
保険調査
損害保険や傷害保険の調査では、保険受給者が申告通りの傷病であるのかどうかを調査するために、尾行張り込みの行動確認調査をすることが有効です。負傷により腕が動かせないと申告して、労災保険や傷病保険を受けているにもかかわらず、行動調査をしてみると、平気で重いものを持ち上げたり、車の運転をしたり、隠れて副業についていたりするケースが散見されます。そういう場合は、行動調査が、保険不正受給の決定的な証拠材料となります。
社員の不正調査
不正行動が疑われる社員の行動確認でも、尾行や張り込みの行動調査が威力を発揮します。情報漏洩や贈収賄や不正なキックバックの受け取りなどで、同業他社や接触が禁止される人物と接触していたりする証拠を押さえることも可能です。
社員の不正調査(ビジネス身辺調査)の詳細は、こちらをご覧ください。
浮気調査
配偶者間の浮気は多くの国で、民法で違法行為と定められています。因みに、イスラム法では男性は4人まで妻を娶ることができます。
浮気が発覚すれば違法行為とされるため、公然と浮気している事実を公言する人物はほとんどいません。したがって、浮気の事実をつきとめるためには、尾行や張り込みの行動確認調査が有効です。
なお、イスラム圏の国では、第4夫人まで持つことができるとしても、第1夫人は、第2夫人、第3夫人の待遇面の相違に戦々恐々としています。法的に認知されているとはいえ、夫も全ての配偶者を完全平等に扱うことはできません。したがって、イスラム圏の国では、妻同士がお互いの事情に関して熾烈な情報収集を行っているのが実情です。
まとめ:行動調査は対象者の具体的な行動を調べる調査!
対象者本人が対外的に公開するはずがない行動や、関係者からの証言が得られにくい内容の調査では、行動調査が最も有効な手段の一つとなります。ただし、尾行や張り込みの行動調査は、現在進行形の行動を調査する手法です。過去の不正行動に関しては、関係者からの証言や密告、行動履歴が把握できる各種データなどの照会でないと有益な情報が得られません。
関係者や行動履歴を確認できるデータソースに見当がつかない段階では、先に行動確認調査を行い、立ち寄り先や接触人物を洗い出して、その後に関係者への取材調査やデータ照会調査を行うパターンもあり得ます。
例を挙げると、保険の不正受給調査であれば、行動調査をすることによって、行きつけのスポーツジム、ナイトクラブ、整骨院、取引銀行、密接交際者等が判明します。対象者の過去の行動パターンまで調査したい場合は、事後、これらの関係先関や係者に対し聞き込み取材やデータ照会を行うことができます。こうした流れで、対象者に関して、過去から現在に至るまでの総合的な情報を収集することが可能となります。
当社、Japan PIは従業員の不正調査から浮気調査まで、幅広い行動調査、素行調査を提供しています。もし何かお困りのことがありましたら、無料相談を承っておりますので、お気軽にお問い合せください。