アメリカの探偵の実態と、日本やヨーロッパとの比較

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アメリカの探偵に与えられている権限

日本では、海外の探偵の実情や興信所業界の実態について、報道されることがほとんどありません。日本を含む東アジア圏では、探偵・興信所業界の存在自体が、どちらかというとタブー視されています。そのため、映画やドラマの探偵以外の、探偵の実態について関心を持っている人は少ないようです。

また、「アメリカでは探偵に強力な捜査権限が与えられている」と勘違いしている人も多いです。実際は、アメリカという国は情報公開に関して、最も先鋭的で、あらゆるデータが公開情報としてアクセス可能となっています。従って、探偵・興信所は、捜査権限で特権的にデータにアクセスできるということはありません。彼らはあくまで公開情報の収集におけるプロであり、そのスキルで探偵業務を行っています。

日本と東アジアの探偵業界の傾向

日本を含む東アジア諸国では、国家に権力が集中し、民間に情報が公開されにくい政治体制があります。中国の共産党体制が、国家統制の顕著な例です。他の東アジア諸国は、自覚がないものの、歴史的に中国文化圏の影響を受けており、中国の共産党体制に近い中央集権的政治体制のDNAを受け継いでいます。日本も例外ではありません。機密性の高い情報は、捉えようによっては相手を服従させるための武器にもなります。中央集権国家は、情報収集の民間組織を快く思いません。

アメリカの探偵・興信所の産業規模

アメリカの探偵・興信所産業の規模は、他の国よりも大規模です。 西欧圏でも、とりわけヨーロッパでは、 国家組織に調査業務を委ねる傾向が強いです。反面、アメリカ人は自分たちの手で問題を処理することに慣れています。 アメリカが訴訟社会であることも、探偵残業の繁栄の要因です。

アメリカの探偵は、あらゆる種類のケースを扱いますが、ソーシャルメディアとオープンソースインテリジェンスを使用した身辺調査を専門としている業者が多くあります。

アメリカの探偵の多様性

ジャンルや案件ごとに、専門分野が別れている

 驚くべきことの1つは、探偵業者が持つことができる専門分野の多様性です。 中には、患者を殺す「死の天使」である「医療連続殺人犯」を調査する、病院所属の調査員(医療過誤調査専門の探偵)がいたりします。 また、ビットコイン取引の専門家、家系図調査員、動物の鼻の跡の鑑識調査員もいます。動物に関連するところでは、家畜窃盗犯を専門に調査する探偵、動物虐待(宗教儀礼上のいけにえ)を調査する、動物福祉の専門探偵もいます。  最近では、Alexaのような人工知能プログラムから、法医学的証拠を収集する探偵もいるくらいです。

より一般的な専門分野でさえ、信じられないほど多様です。 配偶者の浮気、親権争い、借家人を調査する家主、企業の身辺調査、保険金詐欺、訴訟支援などの専門ジャンルがあります。 シリコンバレーのCEO達は、営業秘密の漏洩や、競業避止義務に違反した従業員を見つけるために、御用達の探偵・興信所を抱えています。ハリウッドのスタジオは、スターがトラブルに巻き込まれないようにするために探偵・興信所を雇っています。 保険会社に雇われて、酒造会社の営業になりすます探偵もあります。 彼らは有名人に電話して、お試し用の無料のアルコールを発送することを提案します。これは、アルコール依存症かどうかを確認するためのトリックです。無料の酒類をどれだけ注文したかが、依存症の判断材料となるのです。

冤罪調査を専門とする探偵

昨今、探偵業界にはダークなイメージがありますが、本来は「人助け」の仕事です。アメリカでは、検察庁がコールドケース(迷宮入り事件)の為に、探偵を雇うことがあります。Brooklyn District Attorney(ブルックリン地方検事)やイノセンスプロジェクト(Innocence Project)のような非営利団体は、冤罪捜査の為に探偵と連携しています。 一部の探偵は、国選弁護組織(Public Defenders)に所属し、被告人を死刑囚監房から救うための、情状要素(緩和要素)を調査します。

ある麻薬密売組織が、恋愛感情を悪用してある老人を麻薬の運び屋に仕立て上げた事件がありました。この老人は素朴で、彼を愛していると信じていた女性から搾取されていました。彼は、自覚なく、女性の指示のもと、麻薬の密輸に関与していました。公選弁護人事務所は、こうした案件で探偵を雇い、証拠収集を行います。

小規模な案件を担当する、便利屋的探偵

探偵といえども、ほとんど便利屋に近い案件も中にはあります。Japan PIが見聞きした案件では、左利きの用のバイオリンの販売先を調査して調達する業務、自閉症の息子がホテルに忘れた大切なぬいぐるみを探す仕事などがありました。このような調査は一見すると簡単なようにも思いますが、パターンが決まっている調査ではないぶん、より柔軟な対応が求められます。

世界の最先端が詰まったアメリカの探偵技術

多くのアメリカの探偵の業務は、インターネットをベースとしています。ソーシャルメディアは両面コインのようなもので、公開アカウントでは「理想的に作り上げた自らのイメージ」を演出する人がほとんどです。 しかし、匿名で投稿するRedditのようなウェブサイト(掲示板サイト)では、屈折した感情や、ネガティブな側面が出ていたりします。この点は日本と同じです。

偽装調査や特殊取材、証言録取などの業務が多いことから、被取材者とコンタクトしたときの会話記録の為のガジェットが普及しています。ペンレコーダー、ボタンカメラ、コーヒーカップを装ったカメラなどのガジェットは、映画やテレビの世界だけではなく、実在する技術です。

アメリカにおける個人調査の実情

大衆的なイメージでは、探偵のステレオタイプな仕事といえば、夫婦間の不貞行為調査です。しかし、実際の浮気調査の多くは、配偶者からの依頼より、兄弟の交際相手についての調査や、交際相手のパートナーについての調査が主流です。

最も感情的に重く、倫理的に困難なケースは、子供の監護権調査です。 元配偶者が子供を誘拐して別の国に連れ去ったりすると、政府の救済措置が十分でないため、子供を心配する親は探偵の助けを借りることになります。 こうした調査では、子供がDV等の危険な状態にあるのか、子供がどちらの親と一緒にいる方が安全なのか、難しい判断をしなければなりません。

MeTooムーブメントとアメリカの探偵

アメリカでは、#MeTooムーブメント(マスコミやエンタメ業界のセクハラ訴訟)によって、セクハラに関する案件が激増しました。 弁護士が、有名人に対する告発を調査するために探偵を雇うようになりました。 多くの場合、特定の時間に、有名人や著名人がナイトクラブにいた目撃証言を得る調査です。今から約50年前、Title IX(教育機関での性差別や性的違法行為を管理する法律)が可決された際には、性的違法行為で告発された学者達を擁護する探偵業者の為の専門部署が創設されました。

アメリカの探偵は拳銃を利用する?

アメリカの探偵は、普通、銃を所持することはありません。唯一危険を伴う業務というと、プロセスサービス(法廷文書の送達業務)です。訴訟提起された被告が激高して、暴力を振るう危険があるのです。特に制限命令を受けた、暴力的な傾向がある人物の場合、感情的になって探偵に危害を加えようとするケースが多々あります。ただし、長年離婚を求めていて、その裁判所の通知が来て喜ぶ被告がいたりもします。

カルチャーブリッジ的な意味での探偵調査もあります。宗教や文化的背景が違う二人の結婚に際してなど、両親が息子や息子の婚約者を調査することがあります。保守的な家庭では、同一の民族・宗教・文化グループ以外での結婚に、強い懸念を示す事例があります。探偵調査は、そうしたカルチャーギャップを緩和する役割も担っています。

探偵から調査されることは、必ずしも悪いことではありあせん。あなたにネガティブな要素がなければ、探偵調査が、新規取引、就職、新たな人間関係の構築などを促進する、重要なファクターとなります。

まとめ:アメリカの探偵業界は、日本や欧米とも異なる慣習がある

このようにアメリカの探偵業は日本より幅広い内容で展開していることが分かります。ニーズも多くあり、情報の自由(Freedom of Information)の思想により調べられる範囲も広いのが特徴的です。

JapanPIでは、長年のグローバルな知識と経験を活かして、アメリカを初め海外での調査依頼にも対応しています。原則的には、海外の専門家と協力して調査を行うことになります。

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