日本では、SNSの裏アカウント(裏アカ)割り出して採用調査をするという、探偵・興信所業者の広告を目にするようになっています。アメリカでは、SNS投稿を採用調査に利用することを規制する法整備が進められていますが、日本では、SNSの投稿を採用判断に利用していいかどうかについての議論もなく、それを規制する法律もありません。
今回は、日本の裏アカウント調査について概要をお伝えします。
裏アカウントとは
裏アカウント(裏アカ)の狭義の定義は、「リアルな知人には教えていない、ネット上の知り合だけとつながっているアカウント」となります。広義では、名前を公開している本アカウントでは発信できないような、さまざまな情報を投稿する為の闇アカウントも含むかもしれません。
調査できるのは裏アカウントが限界
ただし、採用調査で、確認するものは、狭義の裏アカウントです。採用候補者が、誹謗中傷等の犯罪目的のSNSの闇アカウントを保持していれば、問題です。そういうものを、事前に発見できるに越したことはありません。しかし、実際問題、そのような闇アカウントから身元をたどること自体が不可能な場合もあります。その意味で、採用調査でそこまでの調査はできないのが現実です。
裏アカウントの調査方法
裏アカウントは、基本的には、名前や顔写真で見つけます。
匿名の裏アカウントでも、以下のような手がかりを元に検索すれば、遊び半分で作成された裏アカウントであれば、発見できる可能性があります。
- 出身地
- 誕生日
- 電話
- 実名アカウントの友人などの顔ぶれ
- 写真
- 投稿のくせを加味して特定
SNSの投稿の採用調査
探偵会社によっては、採用調査で採用候補者の裏アカウントを確認し、候補者の裏の姿をあぶり出すと宣伝している会社も出てきました。リアルな知人には公開していないけど、ネット上だけで本音を発信している、という人は多いと思います。それを確認できれば、表向きの言動とは別の一面が確認できる可能性があり、調査手法としては有効な手段です。
ただし、アメリカでは、SNSの情報を元に、採用や取引の判断をしてはいけない、という連邦法があります。アメリカの連邦法であるFCRA(Fair Credit Reporting Act = 公正信用報告法)では、ソーシャルアカウントの内容を採用調査の判断に使用してはいけないと規定されています。
裏アカウントと闇アカウント
遊び半分で作成された裏アカウントと、誹謗中傷や強迫のために作られた闇アカウントには、違いがあります。遊び半分の裏アカなら、根気強くリサーチすれば、対象者とのつながりを確認できる可能性が高いです。しかし、誹謗中傷や脅迫の為に作られた闇アカウントの身元特定は容易ではありません。
明らかに誹謗中傷のためだけに作られた闇アカウントでは、身元を確認することより、SNSの管理者にそのアカウントの使用差し止めやアカウント削除を依頼するのが得策かもしれません。
SNS上のインフルエンサーの炎上リスクとして、本人が、表アカウントと裏アカウントのつながりを完全に切断しきれておらず、誰かが偶然に発見し、炎上する場合があります。インフルエンサーの「身体検査」では、そのようなリスクを考慮する場合もあります。
闇アカウントの具体例
例えば、以下は、タイからの政治亡命者の反体制活動を粛清する為に用意されたTwitterの闇アカウントです。このアカウントでは、対象者の行動を晒すことによって、対象者を脅しています。
タイからの政治亡命者の写真や行動パターンを晒すTwitterの闇アカウント
https://twitter.com/Pavinkyotoo
Twiiterは、アカウント作成時、SMS(テキストメッセージ)認証だけだったりします。匿名のプリペイドデータSIMで認証されていたりすると、Twitter上の情報だけでは、犯人の身元をたどることはほぼ不可能です。
まとめ
現在、日本では、採用調査で、SNSの投稿情報を判断基準にしてはいけないという法規制はありません。しかし、アメリカでは、そのような法律が整備されており、日本でも、SNSの投稿情報を元に採用内定が取り消されたり、解雇される等の事例が多発すれば、規制する方向に法改正されるかもしれません。いずれにせよ、採用調査を実施する際には、センシティブな情報を扱うため、プロの知見が必要不可欠です。詳細はJapan PIの採用調査概要をご覧ください。