JAPAN PIは、バイリンガル探偵として活動し、日本語と英語の翻訳を日常業務でやっています。ただし、私達は、翻訳や通訳でお金を稼いでいるわけではありません。海外顧客に対応するため、言語翻訳をおまけでやっているにすぎません。
日本だと英語ができるとかっこよく見えるかもしれません。しかし、私達は、かっこつけるためではなく、海外顧客獲得のため、実利的に外国語対応しているだけです。そのため、AI翻訳をフル活用したスピーディーな翻訳に依存しています。ただし、AI翻訳kはまだ完璧とは程遠いので、AI翻訳の結果の品質に注意しなければなりません。
特に長い文章になったり、日本語に主語が入っていなかったりすると、意味がおかしくなります。AI翻訳の特性をよく知り、使いこなすことが大切です。今回は、AI翻訳の使い方について解説します。
事前編集機械翻訳(Pre-edit Machine Translation)
AI翻訳を利用する際のテクニックのひとつに、翻訳前のテキストを、あらかじめ翻訳がしやすい文章に変えておく、というテクニックがあります。具体的には、以下のような項目を確認します。
- 長い文章を短い文章に書き直す
- 文章に必ず主語を入れる
- 複数の意味を持つ言葉を明確な言葉に言い換える(東大を出た→東大を卒業した、または、東大から出た)
- 名詞が単数形か複数形かを定義する (男→男たち、島→島々)
- 定冠詞を追加する(知人に→その知人に)
- 固有名詞をローマ字化する(片桐→Katagiri)
彼は営業に関しては私にとっての反面教師であった。
AI翻訳:He was a teacher to me when it came to sales.
ここでは、「反面教師」という言い回しが翻訳を難しくしています。この文章で言いたいことはなんなのか、どのような言い回しを使うことで、翻訳がうまくいくかを考えて見ましょう。
彼は営業に関してやってはいけないことをやっていた。
AI翻訳:He was doing what he shouldn’t do with sales.
Come と Go
一番基本的な言葉なのですが、英語のcomeとgoは、日本語の「来る」と「行く」とは意味合いが微妙に違います。Google翻訳などのAI翻訳では、まだこの違いを認識して適切に自動翻訳してくれません。
違いは以下の通りです。
英語
come:主語が話し手・聞き手に近づく(主語が起点)
go:主語が話し手・聴き手から離れる(主語が起点)
日本語
来る:主語が話し手・聞き手に近づく(聞き手・話し手が起点)
行く:主語が離れる(主語が起点)
多くの場合は違いをそんなに気にすることはありません。例えば、以下の例なら修正する必要はありません。
行く年来る年
自動翻訳結果:Year to go year to come
人々が行き来しています。
自動翻訳結果:People are coming and going.
自動翻訳でおかしくなる事例は以下です。
「私がそちらに行きましょうか?それとも、あなたがこちらに来ますか?亅
「私がそちらに行きます。亅
自動翻訳の結果:
“Shall I go there? Or do you come here?”
” I will go there.”
この翻訳結果でも、英語話者は、文脈で意味を分かってくれるとは思います。しかし、英語では、以下のように、goではなく、comeにした方がよいところです。
“Shall I come over theere? Or do you come here?”
“I will come over there.”
上記の自動翻訳の結果だと、英語話者にとっては、日本語話者が「私がそちらに来きましょうか?」と聞いて違和感を感じるのと同様の、違和感があります。
これは以下のような敬語に書き換えると自動翻訳がうまくいきます。
「私がそちらに参りましょうか?それとも、こちらに来ますか?亅
「そちらに参ります。亅
自動翻訳結果
“Shall I come over there? Or will you come here?”
“I will come over there.”
参るは行くの敬語とされていますが、英語のcomeと同じ概念の言葉です。主語が相手に近づいていく(くる)を表す言葉です。ただし、参るは、主語が私(I)限定の言葉で、行くを参るに変えれば必ず自動翻訳が上手くいくということではありません。
行くとか来るとかは非常に基本的な言葉なのですが、意外な盲点があるわけです。
Bring と Go
英語の bring と goも、 come と go と同じで、日本語の「持ってくる」「持っていく」とは微妙にずれてしまいます。
英語
bring:目的語が話し手・聞き手に近づく(目的語が起点 )
take:目的語が話し手聞き手から離れる(目的語が起点)
日本語
持ってくる・連れてくる:目的語が話し手・聞き手に近づく(話し手・聞き手が起点)
持っていく・連れていく:目的語が話し手・聞き手から離れる(話し手・聞き手が起点)
以下の事例では日本語は「持ってくる」と「持っていく」が使われています。自動翻訳では、bring と takeが間違った結果になるかと思いきや、翻訳結果には全く問題がありませんでした。
「私がそれを持って行きますか?あなたがそれを持ってきますか?」「私がそれを持って行きます。」
自動翻訳結果:”Do I bring it? Do you bring it?” “I will bring it.”
以下の事例では自動翻訳では若干おかしくなってしまいます。
私は明日彼を大使館に連れて行きます。その後私はあなたの家に彼を連れて行きます。
自動翻訳結果:I will take him to the embassy tomorrow. Then I will take him to your house.
「私はあなたの家に彼を連れて行きます」のところは、”I will bring him to tiur place.”にならなければいけません。
文脈で英語話者にも、意味はわかってもらえるとは思います。ただし、正確を期すなら、日本語と英語の決定的な違いを理解した上で、修正しなければなりません。
まとめ
Google翻訳は、無料アプリでもあり、AIの精度が抜群というわけではありません。また、いくらAIか進化しても、完璧な自動翻訳ができるレベルまで進化できるのかわかりません。
しかし、翻訳前の言語を修正することで、完璧に近い結果を導き出すことかできると思います。
そのためには、自動翻訳が苦手な部分をよく理解し、手動で修正しながらうまく使いこなしていくテクニックが必要です。
翻訳元・翻訳先の言語について、文章構造の違いや、翻訳にズレが生じやすい代表的な事例についての基礎知識を学んでおくことが重要です。