勤務先調査とは対象者の就業先(所属や収入源)を判明させる調査です。主な方法は、早朝から対象者自宅を張り込み、出勤の移動を追跡することで判明させます。
日本の調査会社の多くは「簡単な・成功しやすい調査」と捉えがちで、依頼人サイドにも安易な見積りを出すケースがあります。しかし、私達は慰謝料逃れの対象者など、難航したケースを多く取り扱い、勤務先調査となれば、厄介なイメージを持っています。
もし、今あなたが対象者の勤務先を調べたいとき、以下の点ついて注意しなければいけません。
なぜ勤務先調査は簡単と言われる?
そもそも、日本の調査会社の9割が行動調査(張り込み・追跡)ばかりで、またさらに9割が浮気調査です。日本の調査会社が行っている勤務先調査とは、浮気をした相手方へ慰謝料算定のためであることが多いです。
ここで一旦、浮気をする対象者について特徴を挙げます。それは「比較的、浮気をする人間は一定以上の所得・ライフスタイルを持つ」ことです。浮気をするとなれば少なからず交際費が発生します。また、交際のための余暇も必要です。交際費と余暇を手にしやすい人物とは、優良企業勤務や中年層以上の社員です。つまり、これらのポジションに就いた対象者であれば、「日勤でかつ、定時出勤」であり、朝イチで張り込みをすれば、対象者は出勤します。
浮気調査に浸かった調査会社の弊害
浮気調査としての勤務先割り出しを主体とする調査会社は、上記の理由で勤務先調査を「簡単」と認識しています。せいぜい手を焼くのは浮気相手が社長であるケースで、「ヒラ社員より遅く出社し、時間がかかった」という程度です。日本の調査会社は浮気調査に特化したあまり、他のケースの対象者すら浮気調査の対象者と同じ感覚を抱いてしまいがちです。
私はJapan PI以前に浮気調査を多く扱う調査会社に在籍していました。「支払い命令の判決があったものの、相手方は支払いをしません。勤務先を割り出して、給与差押えしたい」という依頼がありました。前調査会社の社長は浮気調査と同じ感覚で、「朝に張込みすれば一回分の調査で判明します」と安易な提案を依頼人にしました。
しかし実際、この勤務先調査は驚くほど難航し、30時間40万円ほどにもコストがかかりました。初日、いつもの勤務先調査のように早朝に張り込みましたが、昼まで対象者は出ませんでした。「今日はフレックスで休暇だったかもしれない」との理由により、調査2日目も早朝から調査しましたが、対象者は外出しませんでした。「夜勤なのか?」と疑い3日目、朝6時からの調査を18時から開始の設定で転換させましたが、対象者は外出しませんでした。「このままではメンツが立たない」と最後の覚悟を持って臨んだ4日目、24時間体制の調査を実施。朝6時から開始したところ、対象者は15時に外出し、1時間半ほど移動時間をかけ、17時始業の警備会社に出社しました。
トラブルを抱える対象者の勤務先
裁判やトラブルを抱えたり、訴訟やその支払いに応じない人物は、日勤や一般的な会社に勤めていないケースが多々あります。訴訟を提起されれば、もしくは判決が下れば、それに従うのがおよそ「常識」です。その「常識」を持っていないのですから、就業感覚や取引関係でさえ適正な概念を持っていないのです。「詐欺まがいで言葉が上手いだけのコンサルタント」「グレーゾーンや不正取引を横行する転売屋」「仕事をすぐに転々とする日雇い派遣」など、このような稀少な職種は就業スケジュールがまちまちです。
また、浮気調査のように「対象者についてある程度依頼人が把握している」「前回、私達が調査している」という状況ではなく、事前情報が少ないです。マンション構造によっては初日、対象者の識別や移動手段の把握で終わるかもしれません。こういう意味でも、勤務先調査とは日数がかかります。
勤務先調査の対応策
負債者やトラブルから逃げるような対象者への勤務先調査に際し、私達は「現地確認」を推奨・実施しています。現地確認とは、いきなり張り込みを行うのではなく、最低料金により、対象者本人、外出の有無と時間、移動手段の特定を行います。
例えば、対象者が依頼人に伝えた住所、住民票住所は対象者のダミーの住所であったりします。「明らかにダミーの住所である」と判った場合、張込みをせず、不必要な調査を回避できます。勿論、そこから聞き込み調査に移行したり、実際に対象者が外出した場合は追跡にスイッチすることが可能です。
もう一つの手段として、「聞き込み調査」を追跡調査に複合しています。近隣住民、自宅物件の所有者、対象者の立ち寄り先などに取材を行います。直接的に知っていなくても、「建設業らしいです」「品川に勤めている」と断片的な情報が集まれば、予測を絞り込むことができます。現場へ直行する工事作業員、セミナー講師を謳う詐欺師には特に効果的です。