法務省において共同親権のパブリックコメント実施が公表されて以来、共同親権についての議論が行われるようになりました。単独親権か共同親権のどちらが良いか、これまでは離婚当事者でなければ考えない領域でした。しかし2022年はこれに付随する子供の連れ去り問題の報道、著名人の言及が増加したことで当事者以外が関心をもつようになりました。それでは、今議論されている親権議論とはどのようなものなのでしょうか?
単独親権はDV被害者を保護しやすい
単独親権とは離婚時に父か母のどちらか一方に親権が決められる現行の制度のことです。戦前の日本の家制度では親権は父のみが握っていたため、この時点から単独親権はスタートしました。戦後は女性も親権を得られるようになりましたが、単独親権のままです。単独親権では監護権・財産管理権を得られるので、実質的に一方の親が子供を支配します。わかりやすく言えば、養育費は相手からもらうものの、一人っきりで子供を育てることになります。
単独親権が良いとされるメリットは、離婚時に一方の配偶者からDVや子供の虐待といった暴力行為があった場合、被害にあった配偶者と子供を制度により守ることができます。監護権があるので、被害に遭った配偶者は子供を守るため親権のない親に会わせないという判断もできます。一方で、親権を持つ親の過度な思考が働き、子供を別居している親に会わせないという親子断絶が起きます。
親子断絶を防ぐ共同親権
現在導入が議論されている共同親権は離婚後別居はするものの、親権は父母でシェアされた状態となります。親は別居していても養育の決定権を持ちます。監護について父母で責任を負うので、同居親の勝手で別居親に会わせないことはできなくなります。養育費未払いの問題解消にも効果的です。共同親権は欧米をはじめ、中国・ロシアのような専制国家でも導入されている制度です。
共同親権は子供にとって、離婚しても両親から育てられることが重要なメリットです。これは子供の利益にフォーカスした一面があります。離婚後の親権が約束されていますので、親権争いをする必要もありません。以下の子供の連れ去りもする意味がなくなり、親子断絶の防止が期待できます。
なぜ共同親権が提案された?
単独親権の現状において共同親権同然に父母が監護に携わるケースもあります。もし、共同親権導入になるとDVに悩む配偶者の措置が滞る可能性があります。こうして議論は起こり、子供への虐待がある離婚は別ケースとして扱う案も出ています。
一方の配偶者がもう一方の配偶者に無断で子供と別居し、虚偽のDVを訴えることにより別居を正当化し、親権を取ってしまう行為を「子供の連れ去り/Abduction」と呼びます。子供の連れ去り問題が共同親権議論の最大のきっかけでした。これは国内だけでなく海外から無断で子供を連れ去るケースもあり、各国の政府機関クラスから日本は非難されています。子供の連れ去りにあった親は親権を取られてしまうと、実質、同居親の独断で二度と子供と会えなくなってしまうのです。
イギリスは政府公式サイトにて日本の連れ去り問題と単独親権制度について言及
メディアが注目する2022年の共同親権
1月24日 フジテレビ
日本在住のフランス人男性が4年前、妻に無断で子供を連れ去られた件について、フランス当局はこの妻に誘拐の容疑で逮捕状を発行しました。共同親権下でのフランスでは、親子断絶が可能となる日本の現状に否定的です。この内容は2021年12月に報道されましたが、年明けでめざましテレビにより報道され注目を浴びました。
4月22日 柴山昌彦氏
柴山議員が会長を務める共同養育支援議員連盟は法務省へ共同親権の提言書を提出しました。また、6月には自民党法務部会としても柴山氏は共同親権の提言を法務省へしています。柴山氏の共同養育支援議員連盟総会では、連れ去り行為に対し警察庁が「正当な理由がない限り未成年者略取誘拐罪にあたる」と名言しています。
5月4日 ひろゆき氏
子供の権利条約を守る会がGWに法務省前で共同親権を訴える集会を開催。ひろゆき氏はTwitterでこれを取り上げ「連れ去られた側は子供に会うことすら出来ないのが当たり前という制度はどうかと思う」とコメントしました。
5月31日 北村春男氏
弁護士・北村春男氏の率いる民間法制審議会家族法制部会委員が独自の共同親権の提案を自民党へ提出。民間団体が独自の法制審を立ち上げて提言を行うことは異例であり、北村氏の意気込みが感じられます。
6月20日 毎日新聞
法務省が法制審議会で共同親権導入の提案を決定。8月の中間試案の取りまとめを目指し、パブリックコメントを実施すると発表。初めて共同親権の報道が一面へ掲載された。この一面の直後から、さらにSNSや討論番組で議論されるようになります。
7月 田端信太郎氏
ビジネス系インフルエンサーの田端信太郎氏が共同親権の是非をツイッターで発議。自らは賛否に関心がないと公平な見解を示しながら、共同親権の賛成派のツイートを引用し、反対派と議論しました。日本の親権問題に関心のない層が知るキッカケとなりました。
DVも連れ去りも未経験の田端氏が発議し、賛否の声を汲み取った
まとめ
離婚の90%が協議離婚であり、親権争いは少数の離婚層しか経験しません。この僅かな人数の中にDV被害にあった親、連れ去りによって子供と会えない親が存在している状況です。DVは80,000件の相談数から8,000件が検挙されている状況ですが、連れ去りの数量は明確に計測されていません。今後の議論により、連れ去り当事者の数量が表面化されるかが議論のキーとなるでしょう。
Japan PIでは、子供の連れ去り、親権争い、面接交渉権拒否、子供の虐待など、子供の問題に関する調査を実施しています。お困りのことがありましたらお気軽にお問い合わせください。