採用調査とリファレンスチェック

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現在日本の採用調査を取り巻く環境は激変しています。その背景には個人情報保護に関するコンプライアンス問題と身分、出自差別に関する問題があります。一方で近年、雇用問題が深刻化する中で(人手不足、採用後の不適正発覚など)再び採用調査やリファレンスチェックなどの重要性が高まってきているように思われます。

今回は採用調査の変遷や問題点や今後の課題や可能性について詳しく解説していきます。

採用調査の問題と方法の変遷


差別に関わる身元調査の問題

日本では、過去に身分差別に関係する採用調査が横行していた時代がありました。

差別撤廃のため厚生労働省が採用調査を制限するスローガンを発信していました。

厚生労働省の施策は、身分差別をタブーにするものでした。

採用候補者の適性や能力に関する採用調査が制限されたわけではありません。

しかし、厚生労働省の身元調査撤廃のスローガンは、調査をすること自体を禁止するような風潮を作ってしまいました。

秘密裏に行われていた採用調査

日本では採用候補者には調査をすることを通知せず裏で採用調査を行うことが慣習でした。

そうした意味で採用調査を発注する企業側も、採用調査を依頼することにある種、うしろめたさを持っていました。

さらに、2005年に個人情報保護法が制定されてから情報収集が困難になっています。

前勤務先での在籍の確認ですら、回答が得られない状況になっています。前勤務先は、個人情報保護法の規定で、在籍時の評価や、勤怠や給与の情報等も、開示できません。

それ以前であれば情報ソースに取材すれば様々な情報が取得出来ていました。その方法の一つにサラ金チェックがあります。

サラ金チェックとは

従来の採用調査では、個人の信用データ(消費者金融の借入データ)の確認が採用調査の一環として大きなウエイトを占めていました。

消費者金融の借り入れデータを取得するには信用情報センターなどのソースからデータを抽出することになります。

個人信用データとは、全貸金業者の共有顧客データで、貸金業者が新たに貸出をする時に顧客のデータ照会を行うためのものです。

貸金業法で個人の信用データは、貸金業の審査目的にのみ使用することと定められています。

従って採用調査の調査業者がこのデータにアクセスするためには裏ルートを使うしかありません。

つまり、信用情報センターに加盟している実際の貸金業者に裏金を支払って、データを横流ししてもらうということです。

過去のサラ金チェック全盛時代

貸金業者は調査会社からデータ照会の依頼を受けると、その対象者が実際に自分の会社に借入をしに来たように装い、データ照会を行います。

そして、貸金業者は結果を報告して、調査業者から手数料を受け取ります。

貸金業者にとっては、日常的に行っている審査照会業務の延長で、サイドビジネスの資金稼ぎができます。

貸金業者にとっても、調査業者にとってもおいしい話でした。

以前は、採用調査業者は、新卒採用の時期に数百名分のサラ金調査を大量受注する事例も多数ありました。

ただし、このいわゆるサラ金チェックは法的にはグレーゾーンでした。

2012年4月、採用調査専門の調査会社が情報漏えいで摘発されました。

具体的な罪名は貸金業法違反です。

個人の信用データは貸金業の金融照会にのみ使用することになっているため、調査会社がこのデータにアクセスすることが貸金業法違反と定義されました。

また、2011年1月警備会社の ALSOK も従業員多数に個人信用データを強制取得させたことが問題とされ、サラ金チェックを中断せざるをえなくなりました。

本人にデータを自己開示させ、それを会社に報告させることに違法性はないものの、人権侵害等の批判が出て自己開示を強制できなくなった事案です。

多重債務者の警備員が現金輸送を担当することはできれば避けてほしいと感じるのは筆者だけでしょうか?消費者金融の多重債務者は、金銭管理能力に問題があります。衝動的な浪費癖、ギャンブル狂、ブランド狂い、女遊び、男遊び、飲酒や薬物中毒者等、トラブルを抱えている可能性が高くなります。

交通警備に従事するなら問題はないでしょう。しかし、多重債務者を現金輸送業務に従事させるべきではありません。

実際に事件が発生するかどうかは別ですが、リスクヘッジの意味で、多重債務者はなるべく金銭を扱う業務を避けた方が良いのは、客観的に考えて自明の理です。

多重債務者は、目の前に現金があれば、そうでないものより魔が差しやすくなる可能性は高いからです。

例えば子供が大人が見ていない隙に財布からお金を何度も盗んでいることを知っていたとします。

普通の大人はそれが分かっているなら、子供が目に付くところに財布を置かないようにするでしょう。

子供の目に付くところに、財布を放置することが窃盗の誘惑を助長します。

会社内でも同じことです。金銭に困っている人物は、そうでない人物よりも目の前に現金があれば魔が差しやすくなります。

そういう意味で重要なポストや金銭を扱う業務に関して、個人使用データの確認はデューデリジェンスとして不可欠です。

その点、日本の法律はまだまだ課題が多いように思われます。

資産調査について詳しくはこちら

(異論や例外があることは承知しています。)

次に他国における信用情報の扱いについて紹介します。

クレジットレポートの他国との違い

前述のとおり、現在の日本では、採用審査目的で個人の信用データを第三者開示請求することができません。

英語圏の国(旧大英帝国=コモンローの国)であれば、訴訟の相手方に関しては、個人の金融信用データの照会が許可されます。

訴訟の相手方となるということは敗訴すれば損害賠償や慰謝料を支払うことになります。つまり、敗訴すれば、被告は債務者となるわけであり、その際の支払い能力があるかどうかが非常に重要な問題となります。

そのため訴訟の相手方に対しては、個人の金融信用データの照会が許可されるわけです。

その意味では、個人の金融信用データが貸金業の信用照会にしか使用できないという日本の現行法は問題を抱えています。海外では、個人の金融信用データは社会のインフラの一つとして、訴訟や民間会社の採用や取引などの際のデューディリジェンスにも広く使用されるべきものという認識があります。

現行法ではこのような限界がある一方で、海外で既に行われている採用調査の手法である「リファレンスチェック」が日本でも普及しつつあります。

リファレンスチェックとバックグラウンドチェック

リファレンスチェックとは

リファレンスチェックは日本語の辞書によると経歴照会となっています。

英語の本来の意味では、採用候補者の過去の上司、同僚、知人、クラスメイト在籍期間や当時の評価を確認する作業です。

他に、バックグラウンドチェックという関連用語があります。

バックグラウンドチェックの本来の英語の意味は、法人や個人が、対象者の信用状況を確認するために、犯歴、訴訟歴、学歴、経歴などを確認する作業です。

英語の本来の意味のリファレンスチェックの場合、採用候補者にリファレンス先(推薦者=前勤務先の上司や同僚など)を3件、5件くらい通知させます。

そして、採用する会社の人事担当者や専門のリファレンスチェック業者がリファレンス先に連絡を取り、取材を行います。

取材の方法は、通常、電話取材がですが、電子メールでの連絡や、オンラインのアンケートフォームで回答を求める方法もあります。

採用候補者からの同意

リファレンスチェックは採用候補者の同意を得て行います。採用候補者の同意なく、チェックを行っても構いません。

しかし、日本国内では厳格な個人情報保護法があるため、採用候補者の調査同意がないとチェック作業自体が機能しません。

リファレンスチェックは有効なの?

外資系企業を中心にリファレンスチェックの採用調査の手法が日本でも浸透しつつあります。しかし、従来の日本の慣習からすると、採用候補者が自己申告しした推薦者に取材しても、重要なリスク情報が得られないのではないかと不安を覚えるでしょう。

採用候補者は、リファレンス先として、関係が良好だった知人のみを選びます。

また、採用候補者が推薦者に事前連絡するため、ネガティブな情報を口外しないよう根回しする可能性があります。いわば、出来レース状態ということです。

しかし、採用候補者の立場からすると、推薦者を3人用意すること自体が容易ではありません。前勤務先でトラブルを起こしていれば、推薦者として申告することができません。

過去の複数の職場でトラブルを起こしていた場合、そもそも推薦者を自己申告すること自体が不可能です。いわば、リファレンスチェックに踏み絵の効果があります。

しかし、推薦者を選定できなければ、採用審査のプロセスが完了しません。候補者としては、ネガティブな評価を受けることを覚悟して、前勤務先の上司などを推薦者に選ぶしかありません。そうなる事を恐れ、求職を辞退する候補者もあるかもしれません。
いずれにしても、採用候補者の実態が浮かび上がるわけです。

リファレンス先選定の過程で人望の有無がわかる

またある意味では、リファレンス先を3件きちんとピックアップできるということは過去に良好な人脈を築いてきた証明となります。

リファレンスチェックの結果も重要ですが、リファレンスチェックを採用候補者に依頼すること自体で、その人をポジティブに評価する人物が複数いるかどうかのテストになるわけです。

採用候補者に通知せず、裏で調査をすること自体が困難になっ現状も踏まえると、これからはリファレンスチェックの手法で採用調査を行うことが自然の流れではないでしょうか。

英語圏の履歴書レジュメと CV の違い

英語では、履歴書を表す言葉がふたつあります。

  • レジュメ (resume)
  •  CV (curriculum vitae) 

簡単に言うと、英語のレジュメは履歴書の簡易バージョンです。 CV は詳細な履歴書のことです。

おおまかに分けると、アメリカとカナダで採用応募時の提出書類として、レジュメを使用します。

アメリカ・カナダ以外のヨーロッパ、インド、アジアの多くの国では、CV が採用応募時の資料として使用されます。

アメリカとカナダでは、年齢差別を撤廃するための法律 (The Age Discrimination in Employment Act = ADEA) が整備されており、レジュメでは、年齢や生年月日の記載を省略することが可能です。

ただし、卒業校の卒業年や、過去のキャリアの長さを正確に記載すれば、おおよその年齢が分かります。

レジュメの場合卒業校の卒業年を省略したり、過去15年以内のキャリアのみを記載するなどして、面接に至るまでの間、年齢についての記載を省略することができます。

つまり、採用応募者の選考の段階で、年齢を考慮しないということです。

面接すれば、当然、候補者のおおよその年齢はわかります。

日本での履歴書では、年齢や家族等の詳細を記載するので、英語で言う CV にあたります。

リファレンスチェックはどの段階でやるの?

アメリカ・カナダでは、面接前の段階ではなく、最終選考の段階でリファレンスチェックを行います。

初期選考の段階では、対象者の詳細な情報を取得しないという事情が背景にあります。

ですから、アメリカ・カナダでは、採用の最終選考的な段階でリファレンスチェックやバックグラウンドチェックを行います。

その段階で採用候補者の詳細な情報を取得するわけです。

日本でも、採用候補者全てに無条件でリファレンスチェックを行う必要はないでしょう。

最終選考の残った人物に対して、チェックを実施するのが通例です。

会社内での独自の採用調査が、でアウトソーシングが必要な場合 JAPAN Pi がアシストいたします。

アウトソーシングする理由としては以下があります。

  • 人事担当者に余計な負担をかけさせない
  • 社内では、リファレンスチェックの経験がなくスムーズに実施できない
  • リファレンス先に採用予定企業の名称を通知しなくて済む
  • 採用しなかった場合でも、アウトソーシングなら気まずさが残らない

その他、卒業証明書、個人信用データ運転履歴住民票納税証明前勤務先での在籍証明書などの第三者取得が可能です。

Japan PIでは、各種証明書類を第三者取得する際の、手続きの詳細についてノウハウを蓄積しています。

また、独自ソースでの、反社チェック、犯歴、訴訟歴の確認も可能です。

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