前職調査とは?調査方法・違法性・メリット・デメリットを解説

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採用調査における求職者の前職調査は、採用の際に候補者の能力や資格だけでなく、過去の職場でのパフォーマンスや経験も総合的に評価したいと考えるものです。しかし、この調査方法が合法的かどうか不安を抱く方も多いことでしょう。前職調査には適切な方法と法的な規制が存在し、違法な手段での調査をすると、採用企業にとっても法的なリスクをもたらす可能性があります。

本記事では、前職調査を行う際の適切な方法や前職調査によって得られるメリットなどを解説します。一方で、前職調査にはデメリットや潜在的なリスクも存在することを忘れずに、公正かつ倫理的なアプローチを心がける必要があることもお伝えします。

前職調査とは

前職調査とは、採用候補者の前勤務先に問い合わせをし、在籍期間や勤怠状況などを確認することを指します。興信所が日本で昔からやっていた手法を主に指します。従来からの手法は、採用候補者の調査の承諾を得ず、秘密裡に情報収集を進めていくやり方です。具体的には以下の2つのパターンがあります。

  • 前職に在職した事実の有無や、在籍期間に間違いがないかどうかの確認
  • 前職での勤怠状況、人事評価、給与体系の確認

ネット記事やSNS等のメディアサーチによって、候補者が前職に所属していた時の活動が確認できる場合もあります。例えば、業界専門誌の取材を受けてその記事が掲載されていたり、業界団体のセミナーでスピーチを行った記録があったりする場合に、前勤務先での在籍が確認されたことになります。ただし、ここで注意したいのは、関係機関への照会でより詳細な情報を照会するためには、候補者本人からの委任状や調査同意書を取得することが必須となる、ということです。

前職調査の目的

前職調査の目的としては、以下の2つがあります。

  • 問題人物を排除して、職場環境の安全を確保する
  • 候補者の適性や能力を事前評価し、適正に応じた人材起用を行う

窃盗・横領・傷害・性犯罪などの犯罪歴を隠した応募者が採用されれば、職場環境の安全が脅かされます。他に、パワハラ、セクハラ等の不祥事や能力不足等で懲戒解雇された人物を知らずに採用すれば、職場環境に悪影響を及ぼします。一方、適性や能力を事前評価して、適材適所の人材起用を行うことは、企業価値を最大限に高めます。採用者からしても、採用ミスマッチを回避でき、最初から高い評価を得て、より良い待遇で勤務できます。

前職調査を行うタイミング

調査のタイミングは、人事選考後、面接後、最終面接後にわかれます。採用ポストの重要度によって、タイミングが変わります。リファレンスチェックは面接後に実施します。人事選考後、全ての採用候補者に対して、簡易的なバックグラウンドチェックだけを一斉に実施することもあります。

前職調査の方法

前職調査では、メディアサーチによる情報収集、前職の人事部への照会、退職証明書の提出、年金手帳の提出、リファレンスチェック、企業側が候補者の関係先を探し出して取材する等の手法があります。採用企業は、前職調査を実施するなら、応募者から調査同意書を取得する必要があります。前職調査があることを公表すれば、応募を辞退する候補者もあるかもしれません。リスク管理と最適な起用法の策定のメリットとのバランスを考え、前職調査を実施すべきか検討するしかありません。

参考:前職調査の同意書兼委任状サンプル

前職調査を実施する企業は減少傾向

近年、プライバシー保護の観点や法的な制約などから、前職調査を実施する企業は減少しています。特に個人情報保護の重要性が高まり、前職の関係者や採用企業が前職調査による個人情報の取り扱いに慎重になっています。従来の日本の慣習では、前職調査を実施することを公表せず、秘密裏に調査を実施していました。そうした候補者からの調査同意や委任がない調査では、前職の人事担当者は、個人情報保護法の規定があり、応募者の個人情報を回答できません。在籍事実のみを回答するところもありますが、法人人事部の過半数は、応募者についての個人情報を回答を一切行いません。前職の同僚や上司と直接コンタクトできれば、応募者についてある程度のコメントが得られる可能性はありますが、当たり外れのある不確実な調査手法となります。

そうした背景から、前職調査が減少傾向にあります。採用企業側も、採用審査が人事的リスク管理で非常に重要であるこは認識していても、前職調査をすることを公言すると、応募者が応募を見合わせるのではないかと心配します。また、前職調査に違法性があるかもしれないとの懸念から、企業側にも応募者側にも、前職調査に対して過度にネガティブなイメージを持つようになっています。

そうしたバランスを考えると、前職調査も、採用選考の一貫として必須であるという認識を持ち、調査同意書兼委任状を応募者から事前取得し、適正な方法で前職調査を実施する社会風潮がいち早く醸成されることを願います。

前職調査を実施する企業

一部の業種や特定の職種では、前職調査がより一般的に実施されています。例えば、金融業界や法律事務所、安全管理に関わる業務などでは、前職調査が重要な判断材料となる場合があります。また、管理職や上級ポジションの採用では、前職でのリーダーシップや経験が特に重視されるため、前職調査が行われることが多いです。

前職調査とリファレンスチェックの違い

リファレンスチェックは、前職調査の一部です。リファレンスチェックでは応募者が参照先(元上司や同僚等)を指定します。会社側が参照先に、仕事の評価や人物像を取材します。場合によっては、元関係者からのレファレンスレター(推薦状)の提出だけで済ませる場合もあります。

前職調査は違法?

前職調査自体が禁止されているわけではありません。差別調査は禁止されています。また、個人情報保護法に違反しない調査手法で実施する必要があります。

中途採用者の前職調査が違法になるケース

前職調査が違法となるケースはいくつか存在します。例えば、以下のような場合には法的な問題が生じる可能性があります。

同意のない個人情報の取得

正当な理由がなく、候補者の同意なしに個人情報を開示したり、収集することは違法とされることがあります。また、情報開示を求められる側の応募者の前職の法人も、応募者の了承なく、個人情報を開示することができません。そうした意味で、応募者から調査の同意を受けることが違法行為を問われない最善の策です。

差別的調査

前職調査を行う目的が差別や人権に違反した目的の場合、当然違法とされます。職業安定法に基づく指針では、特別な職業上の必要性が存在し、業務の目的達成に必要不可欠ででない限り、思想、信条、特定の宗教、所属政治団体、社会的身分、LGBT等の情報を収集してはならないとされています。特に大阪府では、大阪府の条例により探偵業者は全て大阪府に登録する義務があり、差別に関する調査を行っていないか、チェックを受けています。

信用情報

以前は採用候補者に対して、消費者金融の借入状況をチェックする慣習がありました。この慣習は無くなり、消費者金融の借入状況は採用調査目的で利用してはいけないことになっています。これに反して、サラ金情報のチェックを行ったことで貸金業法違反で摘発された事例も過去にあります。また警備会社が、従業員自身に自ら消費者金融情報を自己チェックし、その結果を会社に提示するよう求めた事例がありました。当然、この事例も人権に反するという指摘が入りました。そのことが新聞報道され、以降は本人に自己開示させる手法自体も限定的に実施するしかない状況に陥りました。

前職調査でどこまで調べられる? 

前職調査では、調べられる内容は具体的に以下の通りになります。

  • 前職の雇用形態や在籍期間
  • 担当業務や職務内容
  • 達成した成果や実績
  • 前職での評価やパフォーマンス
  • 前職の離職理由や退職時の状況

しかし、調査範囲は企業や採用ポリシーによって異なる場合があります。一般的には、候補者が提供した情報や公開された情報の範囲内で調査が行われます。

前職調査を行うメリット・デメリット

前職調査を行うことで、企業側と応募側、それぞれメリット・デメリットが存在します。

企業のメリットは、求職者に経歴詐称がないか確認でき、採用後の起用法の指針を得られることがメリットです。応募書類や面接だけでは、経歴詐称を見抜いたり、事前の適正評価の情報を得たりすることは困難です。一方、デメリットとしては、厳格な前職調査を行うことを知れば、求職者との信頼関係が壊れたり、応募を辞退したりする可能性があることです。

求職者側にとってのメリットは、前職調査で企業側から適正な評価を得られれば、入社後、給与面や職場環境でより良い条件を得られる点です。一方、デメリットは、前職調査で、間違った情報が出たり、元同僚等が不公平なコメントを出したりする懸念があるということです。

前職調査の結果で内定取り消しになる?

前職調査は、内定前に行うのが普通です。内定は、雇用契約の締結が決定したことを指すので、内定取り消しは、解雇と同じです。重大な経歴詐称(詐称が無ければ雇用していない状況)がないと、内定取り消しはできません。

前職調査に必要となる書類

採用目的での前職調査は、分かっていない情報を掘り起こす作業ではなく、候補者から提出された情報や資料をもとに真偽を確認したり、関係者からコメントを取得したりする作業です。そのため、採用候補者から経歴を詳細に記載した経歴書を取得する必要があります。さらに、前職の関係者などの被取材者から協力を得たり、第三者機関に証明書などを代理申請する場合には、採用候補者からの委任状や調査同意書を取得する必要があります。

まとめ

前職調査は採用の意思決定において有用な手段であり、適切に実施されることで雇用主と求職者の双方にとって公平な環境を促進する役割を果たします。雇用主は、前職調査を行う際には適切な方法と倫理的な原則に基づいて行動し、個人情報の保護と公正な評価を確保することが求められます。

当社、Japan PIの採用調査は、学歴・職歴の確認、バックグラウンドチェック、レファレンスチェックなど幅広い調査項目をカバーしています。もし、何かお困りのことがありましたら、無料相談を承っておりますので、お気軽にお問い合せください。

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