詐欺会社への債権回収|Japan PIの調査事例

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今回は、詐欺会社の代表者への債権回収事件のケーススタディを紹介します。この債務者は、詐欺事件で摘発された後、法人を解散させないまま放置し、所在をくらましていました。基礎的な情報収集が事件の解決につながった本件について、実際の調査過程を交えて解説します。

詐欺で逮捕された債務者への債権回収業務

弁護士のA氏は、詐欺商法の被害者である依頼者(債権者)のために、債権回収を請け負っていました。調査対象者(債務者)は「サイバー原野商法」と呼ばれるサイバー空間への出資を募るマルチビジネス商法で、一時期は巨額の利益を得ていました。結果的に業務は破綻し、6年前、詐欺商法の首謀者である調査対象者は、共犯者数人とともに警視庁に逮捕されました。刑事訴訟では、懲役1年6ヶ月、執行猶予3年の判決となりました。しかし刑事訴訟の後、対象者たちの連絡先は不明となりました。詐欺商法の舞台となった会社はもぬけの殻となりましたが、解散や倒産にもなっていませんでした。弁護士のA氏は、依頼された債権の回収のために、対象者を探し出す必要がありました。

住民票の除票も消えていた

弁護士のA氏は、6年前の住所で住民票の除票を請求しましたが、除票の保存期間である5年を経過していたため、除票の取得ができませんでした。そこで、A氏は対象者の所在確認や債権回収のための資産確認を、Japan PIに依頼しました。

税法上の償却や第三者破産申立の可能性

弁護士のA氏にとっては、対象者の現在の所在が判明し、残存する資産を発見することが最も理想的です。しかし、それが難しければ、最低でも対象者の現在の住民登録住所を判明させ、第三者による破産申立の手段を取ることで、債権回収や税法上の無税償却により、債権者の利益を図ることを企図していました。

徹底した公開情報の精査

対象者(債務者)や、彼の共犯者が分散して経営していた法人の閉鎖登記簿、企業信用レポートなどを取得し、関連住所や関連人物を徹底的に洗い直しました。債務者たちが詐欺商法で荒稼ぎしていた時期は、月額家賃100万円の超高級タワーマンションを住処としていました。閉鎖登記簿などで確認できた以前の住所は、郊外にあるぼろアパートでした。所有していた車の登録住所も調査しましたが、実家であったり、親族が居住し続けていた形跡もありませんでした。

企業信用レポートにある卒業大学の名簿を確認しましたが、残念ながら債務者の名前は確認できませんでした。企業データバンクに卒業校まで虚偽の申告をしているようでは、債務者に対しての基礎情報を辿ることは非常に困難に思えました。

債務者や共犯者名義の不動産資産の検索を行いましたが、アクセス可能なデータベースでは手がかりは得られませんでした。こちらで洗い出した過去の居住住所について、すべての不動産所有状況を確認しましたが、全て賃貸物件であり、不動産の所有状況からの身元確認もうまくいきませんでした。

訴訟履歴の確認が突破口となる

以上のような調査を経ても、対象者の手がかりは一向に見えてきませんでした。手詰まりのようにも思ましたが、これまでの流れを整理すると、今回の事件においては他にも債権者がいるはずであり、その中には民事訴訟を債務者に提起した債権者もいるかもしれない、と思い至りました。

結果、特殊情報ソースによる照会で、債務者を被告とする民事訴訟が過去5年以内に2件浮上しました。

民事事件の裁判所での閲覧

ちなみに、日本の裁判所では、過去5年以内の民事訴訟の詳細記録を誰でも閲覧することが可能です。しかしながら、記録を閲覧するためには、事件番号を知っている必要があります。

裁判所においては、対象者の名前を出して事件番号を検索して欲しいと伝えても、原告が被告の情報を分かっていない限り、なんの回答もしてくれません。

裁判記録は公開が原則とされていながらも、裁判所が事件番号をブロックしており、実質的に事件の当事者であるか、マスコミで広く報道され事件番号が公表されている事件しか閲覧を認めていないのが現状です。そのため、特殊情報ソースによる照会が必要となるのです。

民事訴訟記録の閲覧で全容が解明された

話が飛びましたが、特殊ルートにより事件番号を反映させたことにより、結果的に訴訟記録の閲覧で、債務者や共犯者についての詳細情報を得ることができました。

民事訴訟の1件目は、他の債権者からの損害賠償請求事件でした。2件目は、最初の元配偶者からの財産分与請求の訴えでした。

訴訟記録の閲覧で分かったことは、債務者と共犯者は刑事事件の判決後、住民票登録を移動させず完全に隠匿生活に入っていたということです。さらに債務者については、事件の舞台となった詐欺会社を設立する前に結婚しており、配偶者側の姓に変更していました。大学の卒業名簿で氏名が確認できなかったのはこのためでした。再度名簿を調べると、債務者の結婚前の旧姓のフルネームで、卒業登録が確認されました。しかしながら債務者の住所や電話番号の登録はなく、同窓会名簿でも身元が割れないよう、手を回していたことがわかりました。

逮捕後の隠匿生活

債務者本人は、刑事事件の判決を受けた後、弟の住所に住民票を移動させていました。しかし、訴訟記録によれば、実際にはその住所に居住している痕跡はなかった様子です。債務者の共犯者は、刑事事件の判決後、東南アジアの国へ住民登録を移動させていました。写真記録によれば、裁判所の調査嘱託によって、入管記録の紹介が行われました。その結果、共犯者はしばらくして日本へ帰国していることが分かりましたが、それ以降の住民票登録の移動がなく、やはり所在不明のままでした。

他の債権者は、主の債務者も共犯者も明確な居所が不明なため、公示送達によって訴訟を進行させ、勝訴判決を受けていたことが確認されました。

共犯者は主債務者の部下でしたが、詐欺商法であぶく銭が入り、三十歳以上も年下の外国人女性と、二度の結婚と離婚の履歴があったこともわかりました。

債権回収業務の結末とまとめ

結果として、実効性のある債権回収につながる情報が得られたとは言えませんが、少なくとも税務上の無償償却の資料としては十分な証拠収集ができました。また、債務者や共犯者の住民登録上の住所や本籍が判明したため、第三者による破産申立の資料となる材料も揃いました。

このようなケースにおいては、本件のように粘り強い調査が必要となります。詐欺立証のための証拠収集は、Japan PIにご相談ください。

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