直接交付による外国送達
これは、外国裁判所からの法的書類の送達で、直接交付による外国送達と呼ばれます。日本では非公式な方法とみなされています。公式な送達方法は、ハーグ条約に基づいた、外務省と日本の裁判所を通じた送達です。
異議の申し立ても可能
受取人はこれに異議を申し立て、以下の方法への切り替えを主張することができます。
- 外務省を通じた公式な送達方法へ切り替える
- 裁判の管轄権を外国でなく日本に変更する
今回の外国送達に異議がない旨を外国裁判所に回答した場合は、外国裁判所での法的手続きが開始します。
異議がない | 外国裁判所へ連絡する |
法的手続きを回避したい | 原告と連絡を取り、和解協議へ切り替える |
放置する | 外国の裁判所で、あなたに不利益な判決や処分が、いったん確定する場合があります(ただしその後、日本の裁判所で、その判決や処分の効力が無効であることを主張できる可能性もあります)。 |
送達方法に異議申し立てをすれば、非公式な送達方法を無効とすることができます。しかし、原告はハーグ条約に基づく公式な外国送達をやり直します。従って、外国裁判所での手続きに応じる意向の場合は、このまま手続きを進めた方が、進行が速く簡便ともいえます。
「渉外離婚の実務 : 離婚事件の基礎からハーグ条約まで」
大谷美紀子, 榊原富士子, 中村多美子著 日本加除出版, 2012.2 から引用
外国から日本への送達
ー指定当局送達/中央当局送達ー
民訴条約の締約国から日本に対し指定当局送達の方法で外国送達がなされる場合,及び,送達条約の締約国から日本に対し中央当局送達の方法で外国送達がなされる場合,日本の指定当局・中央当局は,いずれも外務大臣である(特例法2条·24条)。外務大臣が受けた送達の要請は,最高裁判所を通じて,被告の住所地を管轄する地方裁判所に転達され,地方裁判所が送達を実施することになる(特例法3条,25条)。家庭裁判所が管轄する事件の送達要請の場合は,地方裁判所から家庭裁判所に送達要請か移送され,家庭裁判所が送達を実施する(特例法4条 ,25条)。
外国からの送達の効力が問題となる場合
ー直接交付による送達ー
日本においては,裁判文書の送達は裁判所か送達の名宛人に対し直接行うが,米国を含む多くの国ては,送達は私人が名宛人に直接文書を交付する方法により行われる。そのため,絨判所の文書の送達が直接交付の方法によるとされている国から,日本にいる被告や相手方に対し,送達が直接交付の方法でなされることがある。しかしながら、香港の裁判所からの直接交付による外国送達を無効とした最高裁判決がある。最高裁平成10年4月28日判決(民集52-3-853)。
不適法な外国からの送達に関する相談への対応
直接交付による送逹や翻訳文の添付のない直接郵便による送達である等,適法な送達とは認められない場合は,応訴せずに判決が出ても,外国判決の承認のための送達の要件(民訴118条2号)を欠くとして事後的に当該外国裁判所の判決の日本における効力を争う方法がある。
外国からの送達は,日本で婚姻生活を送っていた外国人配偶者が自国に帰ってしまった後,外国の裁判所に離婚訴訟を提起した場合等,当該外国裁判所における裁判が外国判決の承認のための管轄要件(民訴118条1号)を欠く場合も少なくない。しかし,管轄の欠如を主張して争う場合も民事訴訟法118条2号の「応訴」にあたるから(前掲最判平成0.4.28), 後日,送達要件を欠くことを主張したいと考える場合には,管轄を争うための応訴もすべきではない。
しかし,当事者としては,送達が不適法であっても,放置して離婚判決が出てしまい,後日その無効を争うよりも,応訴して管轄がないことを主張して却下を求めるか,当事者も離婚を希望(同意)しており,子の親権·監護権や養育費財産分与の問題を外国の裁判所で解決することを希望する場合がある。その場合,弁護士としては,不適法な送達に対し応訴すれば後に外国裁判所の判決の日本における効力を送達の点については争えなくなることを説明のうえ,当事者の判断に委ねるのが適切である。
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