合法的な資産調査手法
現行法で、強制執行時の資産調査として、合法的に行える調査手法は以下の3種類である。
裁判所の調査嘱託申し立て(民事訴訟法186条)
弁護士照会(弁護士法23条の2)
財産開示手続(民事執行法197条)
1)と2)は、公務所及び公私の団体に対し、第三者開示請求を行うものである。
強制力なく実質的に無力
制度の存在自体がまだ国民に浸透していない上、この制度の利用に消極的だったり、全く無知だったりする弁護士も多い。
また、個人情報保護法を理由に、開示手続きを拒否する団体も増えており、実質的には、制度の実効性に問題がある。
3)は、債務者本人を裁判所に出頭させ、資産を自己開示っせるものであるが、違反しても30万円の過料の罰則しかなく、有効性ははなはだ疑問である。
民事執行法の不備を調査会社が補完していた
こうした制度の不備を補完する存在として興信所の存在があったが、情報不正取得で調査業者が過酷な摘発を受ける昨今、悪質債務者や詐欺師を撃退する上で一定の社会的抑止力となっていた興信所調査もその役割を果たせなくなってきている。
多くの弁護士は、実質的な債権回収実務を無視して、判決(債務名義)を取得し成功報酬を請求する。判決が取れれば差押えできるが、有効な資産調査の手だてがない。
預貯金の差押え
預貯金債権の差押申え立ての際は
銀行については取扱支店
ゆうちょ銀行については貯金事務センター
を特定する必要がある。
ゆうちょ銀行の貯金事務センターは、銀行の支店に比べると目星を付けやすい為、ゆうちょ口座の差押を優先するのも戦略のひとつである。
銀行については、あてずっぽうで近くにある銀行の支店に、片っぱしから強制執行を仕掛けていくしかないのが現状である。弁護士照会(23条2照会)でも、銀行から回答が拒否される事が大半である。
大阪弁護士会所属の弁護士であれば、三井住友銀行であれば、全店一括照会を行う事が可能である。
大阪弁護士会では、三井住友銀行と協定を締結し、判決による債務名義を有している場合に限り、同行については全店一括による弁護士会照会が可能となっている。
協定により、2014年7月1日より、民事執行法22条に定める債務名義(ただし第5号の公正証書を除く)を取得した債権に基づき、債権差押命令申立のため全店照会を行うと、債務者が預金口座を有する
支店名
回答日現在の残高
等について即時回答が得られるようになった。