裁判の特別送達と探偵業は、実は密接な関係があります。今回は、その関係性と日本の実情について解説していきます。
郵便局の特別送達は世界の非常識?
日本では法律上、裁判の特別送達は郵便局が行うことになっています。日本国内ではこれが常識ですが、国際的には非常に珍しいことだと言えます。
裁判の通知は、被告に確実に通知されなければなりません。訴訟を避ける為、受取を拒否したり、妨害したりする事例も多発するため、所在調査や身辺調査が必要になるケースもあります。したがって、世界の主要国では、探偵業者あるいは専門の送達業者が、裁判所の特別送達を担当します。
国外への特別送達は?
このような日本の制度では、日本国内で完結するケースはともかく、日本から国外への特別送達の場合、日本側の常識が全く通用しません。国際的な民法の違いを調整するハーグ条約に則った特別送達をすることになりますが、郵便局が特別送達を扱う国はほとんどなく、現地国の送達業者や探偵業者を雇うのが現地の慣例であっても、日本の裁判所が諸外国の制度に対応していません。
郵便局が特別送達を行う利点
郵便局は、郵便配達原簿という、ほぼ国民全ての郵便受け取り記録が登録されているデータベースを保有しています。このリストで、当該住所での郵便物受取り履歴の有無がわかります。郵便局で宛所なしとならなければ、当該住所の有効性がデータベースで照会されたことになります。ただし、転入後間もなかったり、転居届けが提出されなかった住所では、実態不明の場合もありえます。
郵便局が特別送達を行う欠点
当然ですが、郵便配達員は、調査員ではありません。特別送達といっても、実務上の扱いは書留郵便と大差ありません。特別送達の際に被告が素直に受け取れば問題ありませんが、裁判の訴状であると聞いたり、あるいはその可能性を疑って、受取拒否や居留守となる被告には歯が立ちません。また、住所不定状態の被告の場合、郵便局は宛所不明と回答するのみで、状況報告や所在調査の実施もできません。
住居所調査専門の探偵社
JAPAN PIは、バイリンガル探偵社として外国裁判所からの外国送達も扱っていた関係上、国内の特別送達にも強い関心を持っていました。当社は、特別送達が失敗した際の住居所調査を専門に扱い、相続や建物の明け渡し、交通事故など、案件ごとの独自ノウハウを蓄積しています。
デジタルな特別送達
デジタル社会では、電子メールや、SNSの通信が主流です。諸外国では、物理的な特別送達が不成功でも、デジタル通信での特別送達が認められるケースが増えています。そうした事案でも、電子メールやSNSアカウント等の公開情報調査(オープンソースインテリジェンス=OSINT)のスキルをそなえた探偵業者が活躍できる機会が広がっています。
(この文章は、『日本調査業協会 第82号季刊誌』への寄稿文を一部編集したものです。)