2016年に、フランスのジャーナリストが「The Vanished(蒸発者)」という本を出しました。西側諸国で、日本の蒸発文化の特異性が注目を集めるようになりました。「日本では毎年10万人が蒸発する。日本には『恥の文化』が根底にあり、不祥事やトラブル等の恥ずべき事が発生すると蒸発して人生をリセットするというメンタリティがある」と、日本の文化について紹介されました。
蒸発大国の日本なので、それがさほど珍しいことでもなく、蒸発者が出ると周囲も諦めてあえて探さないという風潮があるのかもしれません。警察も、事件・事故・遭難等の特異行方不明者以外は、捜索願が出ても、捜索活動を行いません。自分の意思で蒸発した人は、放っておくしかないというのが社会的コンセンサスとなっているのでしょう。
蒸発する原因や前兆とは?
蒸発の原因や前兆には、おおよその共通類型があります。家族や職場等で、そういう原因や前兆がある人物がいる場合は、周囲として蒸発を予防する努力をすべきです。
蒸発の原因
蒸発する原因としては、以下がよくあるパターンです。
- 感情的トラブル:喧嘩、家庭内の問題、恋愛関係の破綻など、感情的なトラブルで蒸発する人がいます。
- 経済的トラブル:金銭問題や借金、経済的な苦境で、蒸発する人がいます。債務を逃れで夜逃げする人もいます。
- 精神的トラブル:うつ病やその他の精神的な問題がある場合、その圧力から逃れるために蒸発することがあります。
- 社会的圧力:社会的な期待や責任感から逃れるために、蒸発することがあります。家庭や仕事のプレッシャーに耐え切れなくなることが原因です。
蒸発の前兆
蒸発の前兆には以下のパターンがあります。
- 急激な行動の変化:蒸発する人は、突然の引っ越し、仕事の辞職、人間関係の断絶など、急に生活パターンが変わることが多いです。
- ソーシャルメディアの沈黙:蒸発する人は、ソーシャルメディアや連絡手段を急に使わなくなります。蒸発者予備軍は、他人とのコミュニケーションを避ける傾向があります。
- 近親者との連絡の途絶:蒸発する人は、家族や友人との連絡を遮断することが多いです。
蒸発する人の特徴とは?
蒸発する(急にいなくなる)人の一般的な性格の特徴や状況の特徴をいくつか挙げてみましょう。
- 孤独志向:蒸発する人はしばしば孤独を好む傾向があります。社交的でないか、他人との関係を疎かにすることが多いかもしれません。
- 秘密主義:彼らは個人情報を非常に厳格に保護し、自分の生活に他人を巻き込むことを避けることがあります。自分の行動や計画を他人に知られたくないと感じることがあります。
- 行動力がある:蒸発する人は、突飛な事を急に実行することが多いです。
- 個人主義:自分のプライバシーを重要視し、他人からの干渉を嫌うことがあります。このため、突然姿を消すことを選ぶことがあります。
蒸発する人を見つける方法
蒸発した人を見つけることは難しい場合もありますが、以下はその方法についての一般的なガイドラインです。
連絡の再試行
蒸発した人との最後の連絡手段を再度試みてください。電話、メッセージ、ソーシャルメディアなどを通じて連絡を取ろうとしてみましょう。トラブルやノイローゼで、一時的に連絡が取れなくなっているだけの可能性もあります。
友人や家族と協力
蒸発した人の家族・知人に連絡を取り、情報収集しましょう。周囲も同じく心配しており、情報提供が得られる可能性が高いです。
オンライン検索
インターネット上で蒸発した人の情報を検索してみてください。彼らがオンライン上で何らかの足跡を残している可能性があります。また、ソーシャルメディアプロフィールやオンラインフォーラムへの投稿をチェックすると、新しい情報が見つかるかもしれません。
警察への連絡
警察への「捜索願」を出しましょう。警察の「捜索願」は、親族や雇用主しか出せません。事件・事故・自殺等の事件性がある案件以外、警察は積極的な捜査はしません。ただし、「捜索願」が出されていれば、職務質問された場合に、所在や安否が確認できます。「捜索願」とは別ですが、一人暮らしの自宅で倒れている可能性がある場合、地元の警察に「安否確認」を依頼することができます。仕事のアポイントメントに無断欠席したり、自己の意思で蒸発する可能性が低い人物であったりするなど、捜索を行うための条件が満たされていれば、警察は、管理者の了解を得て、鍵を開けて自宅内の捜索(「安否確認」)を行います。
探偵を雇う
プロの探偵を雇うことも検討材料のひとつでしょう。ただし、探偵は、警察のように、セキュリティカメラの映像、携帯電話の位置情報、キャッシュカード・クレジットカードの履歴等にアクセスできるわけではありません。探偵ができるのはアナログ的な手法の調査だけです。可能性のある立ち寄り先、関係者への聞き込み、特定の業界の内部情報へアクセス、立ち寄り先の張り込み等、アナログ的な事しかできません。行先について何の手がかりもない蒸発案件では、探偵を雇っても成果が得られない場合があります。現代の刑事事件捜査においては、犯人を追跡するの主要な働きをするのは防犯カメラの映像です。アナログ的な手法で意図的に逃亡している人物を探すのは容易なことではありません。
関係先の目撃情報の収集やオンラインでの情報提供の呼びかけ等を探偵業者に代行させることは可能ですが、手がかりも得られるかどうかには当たりはずれがあります。探偵業者によっては、見つかる見込みがほとんどないにもかかわらず、依頼者の不安につけこんで、着手金をぼったくるところもあるので注意しましょう。探偵の所在調査で成果が出る可能性があるとすれば、調査対象者が、遺留品の携帯電話やPCで、通信履歴、検索履歴、連絡先等を残している場合、ソーシャルメディア等で手がかりを残している場合等です。探偵は、OSINTツール、聞き込みのスキル、ネットワークを通じた特殊情報源等を通じた情報収のスキルを持っているので、ある程度の手がかりがある事案であれば、探偵に捜索を一任する意義があります。
新聞やメディアの協力
蒸発した人の情報を新聞やテレビ、ラジオなどのメディアに協力を求めることができます。これにより、多くの人々に情報提供を呼びかけることができ、行方不明者を見つける可能性が高まります。ソーシャルメディアに人探しの情報提供を呼びかける(拡散希望)方法も、過度の期待はできませんが、一定の効果があります。
大切な人の蒸発防ぐためにできること
大切な人の蒸発を防ぐには、過度なプレッシャーを感じる環境にならないよう、コミュニケーションを強化し、サポート体制を築くことです。以下にいくつかの具体的な方法を示します。
- 近況を把握する:大切な人との定期的なコミュニケーションを維持しましょう。悩んでいることがないか、感情の起伏や近況を察知し、相手の近況を把握しましょう。
- 共通の趣味や活動:共通の趣味や活動を見つけ、一緒に楽しむ時間を持ちましょう。共通の興味を共有することは、関係を深める手助けになります。
- サポート体制の構築:相手が困難な状況に直面した場合、サポートを提供しましょう。感情的なサポートや実質的な支援が必要な場合には手を差し伸べましょう。
- 相手のニーズを理解:相手の感情やニーズを理解し、尊重しましょう。相手が話を聞いてほしいだけの場合や、干渉されず一人の時間を必要とする場合もあります。
- 信頼関係を築く:人間関係に、本音で話せる環境を作り、信頼関係を築く努力をしましょう。
まとめ
蒸発は「失踪者」「行方不明者」とも呼ばれ、日本では特に多く見られます。原因は感情的、経済的、精神的、社会的な要因が関与し、蒸発前兆として、急激な行動変化や、ソーシャルメディアの沈黙が見られます。蒸発者は、孤独志向、秘密主義、個人主義的でありながら、旧に人生をリセットできる行動力がある特徴があります。見つける方法として、連絡の再試行、警察への連絡、探偵の雇用、メディアへの協力呼びかけなどがあります。蒸発を防ぐためにはコミュニケーションとサポートが重要です。
探偵は、警察と異なりセキュリティカメラ映像や携帯電話の位置情報へのアクセスが制限され、アナログ的な手法での調査に限られます。蒸発者の行先が全く分からない場合には、探偵の助力でも成果を得られないことがあります。探偵は目撃情報収集やオンライン情報提供の代行も可能だが、成功の保証はなく、業者によっては不必要な着手金を請求する場合もあります。探偵の所在調査が有効なのは手がかりが存在する場合で、OSINTツールや情報収集スキルを活用することができます。