今回は、中国での商業登記、訴訟履歴、企業信用データベース、そして不動産登記について解説します。中国では近年、法人や商行為に関する訴訟履歴の情報公開が急速に進み、透明性がアップしました。この点では、日本よりも格段に情報公開が進んでいると言えます。
しかしながら、不動産の登録に関しては、いまだに極めて不透明です。利害関係人ではない限り、第三者として他人が所有する不動産の名義を確認することが不可能です。詳細を以下に解説します。ちなみに、中国以外から以下のシステムにアクセスすると、遮断される可能性があります。そのため、中国にサーバーがあるVPNを事前に用意することをおすすめします。
商業登記情報
中国ではオンラインでの企業情報公開が進んでいます。現在、「国家市場監督管理総局」が運営する企業信用情報公示システムである、「国家企业信用信息公示系统」が企業情報確認の基本ツールです。
国家企业信用信息公示系统 (National Enterprise Credit Information Publicity System)
このシステムは、誰でもインターネットを用いて無料でアクセスできます。確認できる情報は、主に以下の通りです。
- 企業の基本情報
- 行政許認可取得情報
- 行政処罰情報
このデータを利用することで、信用リスクや不祥事等の情報が確認可能です。さらに、「企業の基本情報」には、以下の項目を含みます。
- 企業の名称
- 種別
- 法定代表者の氏名
- 資本金
- 設立日
- 住所
- 業種
- 株主及び出資者情報
- 役員情報
- 支店・工場
- 抵当権設定状況
- 持分質権設定状況
- 行政検査結果
- 抹消記録及び年度別企業情報報告
訴訟歴情報
裁判所の判決書公開サイトや執行情報公開サイトで、企業の訴訟履歴が確認可能です。
中国裁判文書網 (China Judgements Online)
判決書公開サイトでは、企業に関する判決記録を検索可能です。取引相手の訴訟記録を確認することで、トラブル防止に役立てることができます。執行情報公開サイトからは、全国の裁判所(軍事裁判所以外)の「信用喪失被執行者」の情報及び、2007年1月1日以降に新規発生又はその前に執行完了が出来ていない執行実施案件の被執行者の情報が調べられます。
また、2016年7月から、最高人民法院(最高裁判所)の裁判が、ネット上でライブ配信されています。
中国裁判公開網 (中国庭审公开网) China Court Trial Online
中国の法人登記の変遷
中国では、2012年10月30日以前、商業登記が以下の3種類の登録に分かれていました。
- 営業許可「工商营业执照」
- 税務登録証明書(税务机关税务登记证)
- 質監督局組織機構コード証明書「质监局组织机构代码证」
2012年10月30日以降、「三証合ー」(三つの書類を一つにする)という政策変更が進みました。そして、現在の方式である「工商营业执照」が、深センを皮切りに普及しました。したがって、現在はそれぞれの商業登記を個別で取得していないからと言って、問題のある会社ではありません。
民間企業信用情報
政府の法人登記システム以外にも、民間企業が運営する企業情報サイトがあります。そのうち代表的なのは、以下です。
- 天眼査 https://www.tianyancha.com/
- 企査査 https://www.qcc.com/
- 水滴信用 https://shuidi.cn/
- 啓信宝 (启信宝) https://www.qixin.com/
政府データから収集した基本的な企業情報は、無料で閲覧可能です。有料会員になれば、出資構造、投資先の情報、役員の兼任状況、訴訟記録などが確認できます。
ただし、民営サイトでは、情報更新の遅延や錯誤がある可能性も否定できません。重要な情報については、政府データも確認し、ダブルチェックする必要があります。
中国の不動産登記
中国の不動産の登記情報は、房産証「房产证」に記録されます。不動産証明書は、以前の住宅所有権証明書の新バージョンです。不動産証明書「不动产权证」は、2015年3月1日から実施されています。
- 房屋所有権証明書「房屋所有权证」
- 不動産証明書「不动产权证」
不動産登録に関する暫定の施行規則「不动产登记暂行条例实施细则」により、登録機関が保有する不動産登録情報は原則で電子媒体となりました。条件を具備できない地域では、紙媒体の登録が許可されています。
情報開示の要件
中国の個人財産に関する情報は、プライバシー保護の理由で、非公開となっています。権利者本人や利害関係人のみ照会が可能です。
登記権利者本人であれば、不動産登録証のコピーを取得できます。他に、利害関係人であれば、不動産登録資料へのアクセスが可能です。
不動産登録資料の照会およびコピーを申請する場合、利害関係を証明する疎明資料が必要です。利害関係の事例としては、相続問題、訴訟等に関わる事項です。必要書類とともに申請書を提出し、審査を受けることになります。
必要書類は以下です。
- 申請書
- 照会目的の説明書
- 申請者の身分証明書
- 利害関係証明書
申請先は、地元の不動産登録の行政機関です。
不動産登録内容
不動産登録情報の登録内容は以下となります。
- 不動産の位置・境界線・面積・用途等
- 権利主体・類型・内容・出所・期限
- 権利変化等の権利状況
- 権利制限、注意事項その他事項
まとめ:あらゆる取引の前に信用情報を確認しよう
中国のように、地理的にも商慣習的にも日本とは異なる国の場合、相手から与えられた情報や、はたまた印象だけで取引に踏み切るのは大きなリスクがあります。今回紹介した情報ソースを当たることで、日本国内にいながらでも、取引予定の企業の信用情報を調べることができます。
ただし、一次情報のソースである中国語を正しく理解する必要があるうえ、さらにVPNの利用や民間データの併用など、さまざまなハードルが存在することも事実です。
バイリンガル興信所のJapan PIでは、日本語が流暢な中国語ネイティブも在籍しています。詳しくは、以下の中国における海外調査ページもご覧ください。