この記事では、GPSの使用方法を中心に、尾行調査の内容や目的、コツや方法をお伝えしています。また、尾行調査をご自身で行いたい方のために、プロが使っている「警戒レベルの確認」の方法、犯罪にならないための行動指針もご紹介しています。
*2021年8月にストーカー法が改正され、ストーカー目的で、無承諾でGPS機器等で位置情報を取得する行為が処罰されるようになりました。GPS機器を利用した調査では刑事責任を問われるリスクがあります。ストーカー法改正 – GPSを無承諾使用がNGに
GPSを使って尾行を行う方法
テクノロジーの進化によって、GPSなどの機材を個人で入手することも可能になりました。GPSを使用することにより、対象者の位置や動線を確認することができます。
GPS トラッカーがバレたらどうする?
GPSの使用において、法的に注意が必要な場面もあります。たとえば第三者の車両に GPS トラッカーを無断で設置した場合、発覚すると法的に罰せられる可能性があります。
発覚して、 GPS トラッカーを設置された被害者が警察に訴えた場合を想定してみましょう。調査対象者が、車両の床下に設置されたリアルタイムGPSトラッカーに気づいたとします。リアルタイムGPSトラッカーの場合、端末の中にsimカードが入っています。simカードを取り出すと、すぐに契約電話番号がわかります。
警察の拾得物係にとって、携帯電話キャリアとのやりとりは日常茶飯時です。携帯電話キャリアは、警察の拾得物係から電話番号の契約者照会が入ると、無条件に契約者の情報を警察署に開示します。こうして警察は、すぐさま契約電話番号から契約者の氏名や住所を割り出してしまいます。
ストーカー行為やDV、嫌がらせなどの疑いがある場合は、以下のような法律違反が問われます。
GPS設置による器物損壊罪
磁石でGPSトラッカーを設置した場合は、器物損壊罪が適用されます。通常は車両の床下に設置されるので、そんな場所に多少の傷ができても、普通は誰も気にしません。しかし、顕微鏡で見ないとわからないような傷であっても、磁石を設置した時にできたと傷となれば、器物損壊罪が適用されます。
GPS設置時の建造物侵入罪
建造物侵入罪の場合、GPSトラッカーを取り付けた時の状況が問題となります。たとえば、対象者の使用する駐車場内でGPSトラッカーが取り付けられたとなれば、建造物侵入罪となります。つまり、公共駐車場や公道以外でGPSトラッカーが取り付けられたとなれば、理論上、建造物侵入罪で罰せられるのです。
被害者が使用する駐車場に監視カメラが設置されていた場合、そこに加害者が入ってきた映像が取得できると、警察としては文句なしに加害者を建造物侵入罪で摘発することができます。
まとめると、以下の2点が重なると言い訳が苦しくなります。
- GPSの契約者から、身元がバレた。
- 敷地内の監視カメラによって、侵入した時の映像が撮影された。
悪あがきにはなりますが、故意に建造物を侵入したわけではないという言い訳をすると、罪を逃れられる可能性もあります。
建造物侵入罪の条文には、「正当な理由なく人の占有する敷地内に入ること」と定義されています。簡単に言うと、内装業者が所有者の許可を得て家の中に入ることや、郵便配達員がマンションの敷地内に入ることは、建造物侵入罪には問われません。敷地内に入るまっとうな理由があるからです。
もちろん、GPSトラッカーを設置するために敷地内に入ることは、正当な理由で敷地内に入ったとはみなされません。しかし、過失や勘違いでたまたま敷地内へ入ってしまったと主張できると、警察としては建造物侵入罪を適用しにくくなります。「自分の家と間違えて入ってしまった」、あるいは「飼い猫を探してうっかり敷地内に入ってしまった」というような言い訳をされると、警察も杓子定規に違法行為を取りにくくなります。
第三者の車両にGPSトラッカーを設置するために他人の建造物の敷地内に侵入した場合、上記のような言い訳を試してみるのも一つの方法です。
さらに GPSトラッカーが「見守り機能」の商品である場合、懲罰を受ける可能性があります。痴呆症老人や子供に設置する目的でGPSトラッカーのキャリア業者と加害者が契約していたケースでは、被害者が無断で GPS トラッカーを設置されたことになると、加害者は GPS トラッカーの契約会社との契約違反を問われます。
警察署はその事実を逆手にとって、GPS トラッカーの契約会社、セコムなどに加害者を刑事告訴するように圧力をかけます。セコムは警備業者で、警察庁の監督を受けています。ですから、セコムは警察の要求には従順に従う傾向が強いのです。
GPSが手に入らない場合の方法は?
配偶者や内縁関係者、親しい友人で Find My iPhone などの携帯を無くした時に探す機能を利用して対象者の位置情報を調べる人もいます。
初期設定でインストールされていたGPS 機能を使って所在地を確認する場合は、刑法犯罪にはなりにくいと思います。ただし対象者にその事実が見つかれば、対象者から民事訴訟を受ける可能性はあります。
GPSを使った追跡を成功させるには?
GPSとあわせて使いたい、尾行のテクニック
GPSを使って相手の行動パターンがわかった場合、次は実際に相手を尾行して、証拠を抑える必要があります。尾行の際には、対象者にばれそうになったらすぐに中断するのが、日本での尾行の原則です。
対象者が誰かに尾行されていると気付いた場合、まずは不審者を点検する行動に出ます。何度も後ろを振り返ったり、曲がり角の先で立ち止まって、後ろから来る人物を確認したりします。
ただし、尾行されているとは知らず、単に道に迷った場合にも、そのような行動を取ることがあります。追跡者は、対象者が道に迷っているのか、あるいは警戒しているのかを正確に見極める必要があります。
直観や洞察力、経験を基に、対象者の警戒行動の質を見極めるのが、探偵の腕の見せどころ。なお、対象者が行う警戒行動には、3つのレベル(段階)があると言われています。
「警戒レベルの確認」とは?
第一段階は、対象者が思いついたタイミングで、念のために一度だけ警戒行動を取る場合です。知っている人物が尾行していたり、待ち伏せたりしていないかを確認する程度です。
第二段階は、対象者がある程度、不審な点に気づいていて、根拠を元に警戒行動を取るパターンです。たとえば、なんとなく自分を見てている人物がいることに気づいて、不安を覚えたとします。そうすると、対象者は別の場面でもその人物が現れないか気にします。知っている人物に似たような人物を見かけた場合、より一層警戒行動が激しくなります。
仮に知人ではない場合でも、一回対象者にインプットされると、次に見られた時に対象者から確信を持たれます。
第三段階は、完全に尾行されていることを確信し、追跡者をトラップにかけようとするパターンです。追跡者が対象者のトラップにかかれば、その場で取り押さえられ、非常に気まずい状況になります。対象者が反社会的人物であれば、追跡者は暴行を受ける可能性もあります。
また、警察に通報され、身柄を拘束される可能性もあります。警察署に連行されると、あなたが誰で、何のために尾行したか取り調べを受けます。対象者に取り押さえられたり、警察に捕まったりすると、尾行の意味が台無しになります。
つまり、最低でも第二段階での警戒行動を回避することができなければ、尾行を中断するしかありません。
尾行がバレそうになったと感じた時は、対象者が本当に警戒行動をしているかどうか、追跡者が自らアクションを起こし、点検する必要もあります。追跡者がそれとなく対象者に接近してみて、対象者の様子を見るのです。仮に対象者が道に迷っているだけであれば、追跡者が接近しても、対象者は全く反応しません。その場合は、自信を持って尾行を継続すればよいわけです。
仮に尾行を継続する場合、しばらく日を空けてから再開することが得策です。
印象操作による警戒回避
対象者が警戒行動が出たとしても、その場でメガネや帽子を着脱したり、上着を脱いで印象を変えたり、違う上着を着用したりして、印象を変えることができます。(ただし、顔見知りでない場合に限ります。)
多くの場合、一瞬見た時のおおよその姿や上着の色などが印象に残っているだけです。上着の色が変わったり、眼鏡をされただけで、対象者は不審者と別人との区別がつかなくなります。
犯罪捜査での、目撃者による容疑者の認定場面を思い出してください。取調室で、目撃者に、容疑者と同じような上着を着せたダミー人物を複数同時に並ばせて、どの人物を目撃したか質問します。 目撃者だという人物も、実は犯人の服装を見ただけで、顔までは覚えていない可能性があるからです。
人間の脳は、ほんの一瞬で身体的特徴をすべて認知することは不可能です。なんとなく髪型・体型・服装の色や形を記憶しているに過ぎません。 そこで、メガネ帽子や着替え用の上着、あるいはリバーシブルの上着などは、尾行の際の必須アイテムになるのです。
犯罪になる?!尾行を行う際のリスク
一般の方による尾行がバレた場合
一般の方は探偵業の登録をしていないので、探偵業法の違反には問われません。しかし、軽犯罪や都道府県条例の迷惑防止規定の違反で罰せられることになります。
また、痴情のもつれの問題も抱えている場合、ストーカー防止法違反になる場合があります。
探偵による尾行がバレた場合
プロの調査員の尾行が発覚すると、軽犯罪の不退去罪、各都道府県の迷惑防止条例に加えて、探偵業法の違反にも問われます。
なぜなら、探偵業法に、「生活の平穏を乱さないように留意しなければならない」という条文があるからです。
犯罪を防止するために尾行しているにもかかわらず、尾行がバレれば調査業者が探偵業法違反で罰せられる、ということです。依頼者にとっては理不尽なようにも聞こえますが、これが現実です。
対象者が警察に尾行されたことを訴えて、追跡者が捕まると、警察は追跡者の身元を確認し、対象者に通知します。そうすると、尾行した人間が刑事罰を受ける上に、対象者にも何の目的で誰が追跡したか全て知られてしまいます。調査の目的で尾行していた場合、全てが裏目に出る結果になります。
したがって、繰り返しますが、尾行が発覚しそうになった場合、その時点で追跡を中断するのが賢明なのです。
張り込みの途中で警察に通報された場合
自分で張り込みをしていて、警察官が来る場合が考えられます。警察に職務質問されるケースとしては、二つのパターンが考えられます。
一つ目は、警察官がたまたま通りがかった時に不審に思い、職務質問をするケースです。警察官職務執行法にのっとって、警察官は怪しいと思えばいつでも職務質問をすることができます。何をしているのか回答できれば、たいていの場合はすぐに終わります。警察官は身分を確認することを目的に質問を行います。
このような任意の職務質問の場合は、原則として身分を明かす必要はありません。しかし、身分の開示を拒んだ場合、警察官がしつこく質問を継続するため、運転免許証やパスポートなどの身分証を警察官に提示した方が質問が早く終わります。言い訳としては、人待ちをしている、仕事の合間で待機していた、などということができます。
二つ目は、誰かが警察に通報して、通報によって警察官が来る場合です。この場合、一つ目よりも強制力が強くなります。通報によって警察官が来た場合は、不審人物の身分を確認することが義務化されます。探偵業法の登録をしているなら正々堂々と身分を語って、張り込みをしていた事を告げれば問題ありません。探偵業法の登録をしておらず、個人的に張り込みをしている場合でも、職業として探偵業をやっているわけではないですが、個人的な関心や問題で調査をしていたと語ることはできます。
いずれにしても、同じ場所にずっと居座ると、警察官の心象を悪くします。張り込みを継続するためにも、別の地点に移動するのが賢明です。
まとめ:自分で尾行を行うことは可能だが、リスクあり!
GPSで得ることのできる情報は、尾行や追跡にとても有効です。さらに、警戒レベルの確認や、衣装による印象操作などのテクニックを組み合わせることで、自分で尾行を行うことも可能でしょう。しかし、たとえプロの探偵であっても、尾行にはリスクが付き物だということがお分かりいただけたかと思います。
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